【フィンテック・AIの聖地】東京駅周辺「7つ星ビル」にスタートアップが集う!大手町が変貌する協業の都(STARTUP集積MAP)

かつてはメガバンクや大企業の本社がひしめき合う「大手の町」というイメージが強かった東京駅周辺エリアが、今、新たな変貌を遂げつつあります。人工知能(AI)やフィンテックといった最先端技術を開発するスタートアップ企業が、この地に次々と本社や主要拠点を移転させているのです。2019年6月3日現在、各社の所在地を調査すると、これらの新興企業が入居する7カ所のオフィスビル、通称「七つ星ビル」と呼ばれる集積地が浮かび上がってきました。賃料が高いというこれまでの常識を覆し、新興企業が「大手の町」に集う背景には、デベロッパーの戦略的な「青田買い」と、そこから生まれる大企業との協業という、大きな価値が存在していると言えるでしょう。

このスタートアップ集積の成功事例として注目されているのが、大手町ビルにあるフィンテックに特化した拠点「FINOLAB(フィノラボ)」です。住宅ローンコンサルティングのMFS(東京・千代田)の中山田明最高経営責任者(CEO)は、「フィンテックのスタートアップが多く入居しており、情報交換ができるのが非常に良い点です」と語っていらっしゃいます。さらに、MFSはフィノラボで「ご近所」にあたる機械学習プラットフォームのData Robot Japan(データロボットジャパン)と、AI技術の連携に向けた交渉を進めており、「同じ施設に入ったこと」が提携交渉のきっかけになったという、まさに協業の都ならではの具体的なメリットを享受している状況が分かります。

フィノラボは、三菱地所が開発した大手町ビル内で、他社と共同運営しているスタートアップ向けのインキュベーション施設、すなわち起業家や新興企業の育成・支援を目的とした拠点です。約50社が入居し、企業同士の連携が活発に進められています。また、この大手町ビルでは、2019年2月には約30社の技術系企業が集まる「インスパイアードラボ」も新たに開設されました。これらの施設が提供するのは、単なるオフィススペースの「場所貸し」にとどまらない、コミュニティとしての大きな魅力だと言えるでしょう。

フィノラボでは、メンバー限定の会合が毎週ラウンジで開催されています。例えば、2019年5月下旬には外部から講師を招き、米国のミレニアル世代の意識調査や大手銀行の戦略についての講演が行われました。10社前後のスタートアップから30人以上が参加し、イベント後の懇親会でも活発な議論が続いたと伺っています。このような交流の機会が日常的に設けられていることが、新興企業をこの地へ強く引き付けている要因のひとつに違いありません。

さらに、ビル自体を実証実験の場として活用できる点も、スタートアップにとって見逃せない魅力です。フィノラボに入居する生体認証技術スタートアップのLiquid(リキッド)は、インスパイアードラボに飲料などの無人販売ショーケースを設置し、実証実験を行っています。利用者は生体認証でカギを開け、商品を取り出すと自動決済が完了するというシステムです。同社の指紋認証技術は、2つのラボの会議室や個室にも導入されており、毎日のように顔を合わせる「ご近所企業」から使い勝手などについて直接フィードバックを得られる利点は非常に大きいでしょう。このスピード感こそが、技術革新を加速させる鍵となります。

スポンサーリンク

巨大企業と隣り合う、戦略的な立地がもたらす革新

大手町ビルには、ラボとは別に、通常の賃貸契約で入居している有力なスタートアップも存在します。その代表格が、2016年から入居するAI開発のプリファード・ネットワークス(東京・千代田)です。同社が入居を決めた決め手は、採用や移動に便利な立地に加えて、実験で使うファナックの産業用ロボットを設置できたという点です。かつては、東京駅周辺エリアは賃料が高く、技術開発に必要な機器の設置も難しいなど、スタートアップにとっては敷居が高い場所でした。しかし、デベロッパー各社は最近になって、将来性のある企業を早期に取り込む「青田買い」の発想で、支援拠点を設けたり、入居条件を緩和したりと、スタートアップとの関係を急速に深め始めたことが、現在の企業集積の原動力となっています。

JR東京駅は、日本全国や海外へのアクセスが良いのは言うまでもありませんが、それ以上にスタートアップにとって大きな意味を持つのは、さまざまな業種の大企業の本社が近いことです。共同研究などを通じて、新興企業単独では難しい大きな事業を実現できる余地が生まれるからです。フィンテックやAIといった新しい技術は、既存の産業や社会インフラとの連携が不可欠であり、その点で、大企業との「協業」は成長の生命線とも言えます。大手町エリアは、まさにその接点を最も作りやすい、戦略的な立地だと断言できるでしょう。

資金調達を加速させるベンチャーキャピタル(VC)の存在

東京駅周辺エリアの集積を一段と充実させているのが、ベンチャーキャピタル(VC)の存在です。コーラル・キャピタル(東京・千代田)やニッセイ・キャピタル(東京・千代田)、XTech(クロステック)Ventures(東京・中央)といった著名なVCも集積の一角を占めています。これにより、大手企業とスタートアップが連携して新事業を生み出し、そこにVCが資金を供給して事業の拡大を後押しするという、理想的なエコシステムが機能しているのです。このような具体的な実績と好循環が、新たなスタートアップを呼び込み、東京駅周辺の集積は今後ますます豊かになっていく可能性を秘めています。渋谷などに代表されるIT系の集積とはまた異なる、金融や重厚長大産業との連携を主軸とした、大手町ならではの価値が創造されていると言えるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました