2019年度、日本の主要企業が計画する海外への設備投資は、全産業(回答644社)の合計で4兆1275億円に達し、前年度の実績を2.4%上回る見込みでございます。これは、次世代車やIoT(Internet of Things:あらゆるモノがインターネットにつながる技術)の普及による市場競争環境の劇的な変化に対応し、各社が持続的な成長を目指すための戦略的投資であると言えるでしょう。
特に目覚ましい伸びを見せているのが、富士フイルムホールディングスで、前年度比で32.4%もの大幅増を計画しています。同社は、バイオ医薬品の製造・開発を受託するCDMO事業(Contract Development and Manufacturing Organization)を強化するため、アメリカのテキサス州に新たな製剤製造ラインを建設し、2021年はじめの稼働を目指しているのです。さらに、自動運転や次世代通信規格である5Gの拡大によって需要が高まる半導体材料事業においても、アリゾナ州とロードアイランド州の2拠点で開発・生産設備の増強を図る予定で、未来を見据えた積極的な動きがうかがえます。
小売業界の巨人、イオンも、前年度から39%増の海外投資を計画し、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。中国に設立したデジタル専門会社を通じてIT人材の育成に注力すると同時に、顔認証技術やセルフレジを導入したIT店舗の出店も予定しているのです。また、2019年度中には、中国やASEAN(東南アジア諸国連合)地域で大型の**ショッピングセンター(SC)**を4店舗新設し、ベトナムなどでの既存店舗の改装も加速させる方針で、アジア市場でのデジタルとリアルを融合した新たな顧客体験の提供に力を入れています。
たばこ業界では、健康リスクを低減させた製品であるRRP(Reduced-Risk Products)への移行が世界的に進展しています。**日本たばこ産業(JT)は、ポーランドにおいて加熱式たばこ「プルーム・テック」**の生産を開始する計画を打ち出しました。欧州を主要な市場として、加熱式たばこの海外販売を積極的に拡大していくことで、変化する消費者ニーズに対応し、競争優位性を確立しようとしているのでしょう。
🚗自動車業界を牽引するCASEへの巨額投資
自動車業界では、CASE(Connected:つながる車、Autonomous:自動運転、Shared & Services:シェアリング・サービス、Electric:電動化)と呼ばれる分野への戦略的投資が最大の焦点でございます。海外投資額ランキングで首位のトヨタ自動車は、前年度実績からは6.1%の減少となったものの、依然として高水準の投資を維持しています。2019年3月には、アメリカでの電動車関連などを中心に、2021年までに合計7.5億ドル(日本円で約800億円)を投じると発表いたしました。
具体的には、ケンタッキー工場で2020年から多目的スポーツ車(SUV)の**「RAV4」ハイブリッド車(HV)の生産を開始するほか、ウェストバージニア州の工場でのトランスミッション、アラバマ州でのエンジン製造能力増強なども見込まれています。自動車メーカーにとって、燃費規制の強化や、米国のグーグルやアップルといったIT大手**との技術開発競争の激化は、電動化を加速させる大きな要因となっているのでしょう。
スズキも、インド・グジャラートに第3工場の建設に着手し、2020年の稼働を目指しています。同国では、東芝などとの共同出資によりハイブリッド車(HV)向け電池工場の建設も進めており、「世界的に燃費規制が厳しくなる中、(HV向け)電池の供給体制構築を急ぐ必要がある」と、同社の長尾正彦取締役は語っておられました。デンソーの有馬浩二社長が「自動車業界は大変革期を迎えているが、環境変化を乗り切る」と力強く述べているように、この変革期を乗り越えるための未来への先行投資が続いている状況なのです。
📉一部企業の投資減少と世界経済の懸念
一方で、すべての企業が海外投資を増加させているわけではございません。海外投資額ランキングで2位の国際石油開発帝石は、前年度実績から25.8%の大幅減となる3493億円の計画でございます。これは、2018年にオーストラリアのLNG(液化天然ガス)事業である**「イクシス」**での出荷が始まったことに伴い、大規模なプロジェクト投資が一段落したためです。プロジェクトの完了は一つの区切りと言えますが、業界や企業の事業フェーズによって投資動向は大きく異なることが分かります。
今回の主要企業の海外設備投資計画からは、多くの企業がグローバル市場での生き残りと成長のために、IoTや次世代車など、革新技術を核とした分野へ積極的な投資を行っている姿勢が明確に見て取れます。しかしながら、米中貿易摩擦の激化がもたらす世界経済の先行きへの不透明感は、依然として最大の懸念材料でございます。この状況がさらに悪化すれば、企業の投資マインドが冷え込み、計画が下方修正されるリスクもはらんでいるため、今後の動向を注意深く見守る必要があるでしょう。
私たち編集部の見解といたしましては、この2019年度の海外投資の増加は、日本企業がグローバル競争で勝ち抜くための「覚悟の表れ」であると受け止めております。特に、デジタルトランスフォーメーション(DX)と電動化という二つの大きな波に対する戦略的な資本投下は、将来の産業構造を形作る上で非常に重要で、その成否が今後の日本経済の成長を大きく左右することになるでしょう。読者の皆様には、これらの最先端の投資動向を注視し、今後のグローバルビジネスの展開にご活用いただきたいと思います。
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