未上場ながら企業価値が十億ドル(約1100億円以上)を超える、いわゆるユニコーン企業は、人工知能(AI)をはじめとするテクノロジーの劇的な進化を背景に、今や世界で340社を超える規模に達しています。この勢いの波に乗って、いち早く将来のユニコーンを見抜き、資金を投じることは、ベンチャーキャピタル(VC)にとって最も重要な腕の見せどころと言えるでしょう。特にソフトバンクグループの「10兆円ファンド」ことビジョン・ファンドの存在感が世界的に高まる中で、他の有力投資家たちも激しい競争を繰り広げています。
調査会社CBインサイツのデータによると、2019年5月5日時点で、世界のユニコーン企業は実に344社を数えます。これらの企業に出資している投資家は、公表されているだけでも合計2,018にも上りますが、その72パーセントはわずか1社への出資にとどまっており、投資先が分散している様子が窺えます。しかしその一方で、10社、20社、さらには40社以上ものユニコーンに資金を提供しているメガ・インベスターも存在しているのです。
どの投資家が数多くのユニコーンに資金を注ぎ、そして将来、新規株式公開(IPO)や売却(M&A)といったエグジットを達成した際に巨額のリターンが見込めるのか。CBインサイツの分析によれば、投資先ユニコーンの合計評価額でトップに立ったのは、ソフトバンクグループでした。その評価額は驚異の3890億ドル(約43兆円)で、これは2位のタイガー・グローバル・マネジメントを45パーセントも上回り、中国のネットサービス大手である騰訊控股(テンセント)の2倍以上という圧倒的な規模を示しています。
最も多くのユニコーンに投資している件数ベースのランキングでは、ニューヨークを拠点とするタイガー・グローバル・マネジメントが42社で首位に立ちました。これに僅差で続くのが、40社のテンセント、そして38社のソフトバンクという結果になっています。注目すべきは、評価額の高いユニコーンの多くが、上位10社の投資家から複数にわたる出資を受けている点です。例えば、民泊サービスの米エアビーアンドビーには8社、配車サービスの米ウーバーテクノロジーズには6社、決済支援の米ストライプには5社が出資しています。
投資先企業の合計評価額の順位を見ると、1位はソフトバンクグループ(38社、計3890億ドル)、2位はタイガー・グローバル・マネジメント(2690億ドル)、3位はフィデリティ・インベストメンツ(2310億ドル)でした。ちなみに、投資家上位10社の中で最も合計評価額が低かったのは、アンドリーセン・ホロウィッツの1340億ドルで、ソフトバンクのおよそ3分の1にとどまる結果となっています。このデータから、ソフトバンクが規模の大きな、つまり評価額の高いユニコーンを厳選して投資している傾向が鮮明に見えてくるでしょう。
初期投資(アーリーステージ)で目利き力を発揮する投資家
より大きなリターンを得るためには、企業価値がまだ低い、事業の初期段階(アーリーステージ)での資金調達ラウンドで出資することが非常に重要になります。ここでは「シード(種)ラウンド」や「シリーズAラウンド」といった極めて早い段階で、将来のユニコーンに出資していた投資家を分析しました。この初期段階での投資件数において首位に輝いたのは、米SVエンジェルでした。米国の起業支援大手であるYコンビネーターが2位に、そして中国のセコイア・キャピタル・チャイナが3位に名を連ねています。
投資家の真の「目利き力」を測る指標として、ユニコーンへの総投資件数に対する初期段階での投資件数の割合、つまり最初から投資に参加している回数の多さに着目するのは極めて合理的です。この「投資効率」が最も高かったのは、Yコンビネーターでした。同社が投資したユニコーン18社のうち、実に16社で初期の資金調達に参加しており、驚異的な目利き力を持っていることがわかります。次いでSVエンジェル(23社のうち18社)、米IDGキャピタル(18社のうち11社)が続く結果となりました。
また、ユニコーン企業の地理的な傾向を見ると、ほぼ半数にあたる49パーセントが米国に拠点を構えており、これに26パーセントの中国が続いています。ユニコーン投資家の上位10社も大半が米企業で、中国企業が2番目に多いという傾向です。上位10社の米国の投資家は、投資先の半分以上が米国のユニコーンに集中している一方で、中国のユニコーンへの投資件数が最も多かったのはセコイア・キャピタル・チャイナの27社(中国のユニコーン全体の29パーセント)でした。米中以外のユニコーンへの投資件数が最も多かったのはソフトバンクの18社であり、ソフトバンクのグローバルな視点が際立っていると言えるでしょう。
これらのデータは、2019年6月3日時点において、世界のテクノロジー投資が米中の巨大な資金力によって牽引されつつ、その中でソフトバンクがグローバルなユニコーンを狙い撃ちしているという構図を鮮明に示しています。特に、Yコンビネーターのような初期段階で高い投資効率を誇るプレイヤーの動向は、将来のイノベーションの方向性を示唆しており、今後も目を離せないでしょう。この熾烈なユニコーン投資競争の勝敗は、次の時代の経済地図を塗り替えることにも繋がるため、その動向は引き続き注目に値すると考えます。
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