今、東京駅周辺の大手町や丸の内エリアが、新たなスタートアップの集積地として大きな注目を集めています。かつては渋谷などが新興企業のメッカとされてきましたが、大企業がひしめくこのビジネスの中心地が、独自の強みを生かして起業家たちを魅了し始めているのです。老舗の不動産ディベロッパーである三菱地所や東京建物といった企業が、この動きを力強く牽引しています。彼らは単にオフィス空間を提供するだけでなく、コミュニティの創出や事業連携の支援といったソフト面に注力しているのが、成功の鍵と言えるでしょう。
三菱地所は、2007年(平成19年)に新丸ビルで「EGG JAPAN(エッグジャパン)」を開設して以来、長期にわたってスタートアップ支援に取り組んできました。同社は、大手町・丸の内・有楽町エリアで30棟を超えるビルを保有する、この地域最大の地主としての強みを最大限に活用しています。大手町フィナンシャルシティ グランキューブ内の「グローバルビジネスハブトーキョー」のように海外企業を主に受け入れる拠点もあれば、大手町ビルの拠点のように国内企業にフォーカスした場所もあり、ニーズに合わせた多様な支援を展開しています。同社の伊藤宏樹 xTECH営業部長は、「大企業が集積するエリアだからこそ、新たなビジネスが生まれる」と述べ、このエリアが持つポテンシャルを強くアピールされています。
💡八重洲・京橋・日本橋エリアの取り組みと安価な支援拠点
八重洲側に本社を構える東京建物も、この流れを加速させています。同社は、京橋と日本橋という二つの橋に挟まれた八重洲・京橋・日本橋エリアを「ブリッジトウキョウ」エリアと命名し、「スタートアップの集積地にしたい」と熱い意気込みを久間田尚紀まちづくり推進部長が語っています。その核となるのが、本社ビル5階に設けられた支援拠点「xBridge-Tokyo(クロスブリッジトウキョウ)」です。この拠点は、約30社の企業が入居しており、スタートアップへ安価に提供するために内装は簡素な設計になっています。具体的な利用料は、1席あたり1万5000円という低価格でありながら、複合機やホワイトボードなども利用できるという、コストパフォーマンスの高さが魅力です。
実際に2019年(令和元年)5月27日に本社をクロスブリッジに移転したオンライン医療相談サービスを提供するアナムネ(中央区)の菅原康之CEOは、この立地の利点を強調しています。「この辺りは、大企業や金融機関へ徒歩で行けるのが良い。事業連携を考慮すると、渋谷とはまた異なる価値がある」と発言されており、単なる賃料の安さだけでなく、ビジネス上のシナジーを追求できる環境こそが、このエリアの真の価値であると言えるでしょう。専門用語であるCEO(最高経営責任者:Chief Executive Officer)は、企業の事業活動を統括し、最終的な意思決定を行う役職のことで、経営のトップを指します。
💰ベンチャーキャピタルとの連携とSaaS系企業の集積
さらに、ベンチャーキャピタル(VC)もこの新しい生態系の形成に重要な役割を果たしています。VCとは、ハイリターンを期待して、将来性の高い未上場企業、つまりスタートアップに対して投資を行う会社またはファンドのことです。彼らは、自社が入居するビルを、投資先の新規採用や事業支援の場としても積極的に活用しています。例えば、大手町フィナンシャルシティ グランキューブに入居するコーラル・キャピタルは、2019年(令和元年)5月中旬に外国人材などの採用イベントを開催し、なんと240人もの参加者を集めました。このような場所で、気軽に経営課題や採用について相談できる環境は、スタートアップにとって計り知れないメリットとなるでしょう。
ニッセイ・キャピタルも同様に、支援プログラムに採択された企業が入居できる共同オフィスをビル内に設けています。利用料は1席あたり2万円で、丸の内に本社登記も可能です。同社の担当者とスタートアップ経営者が同じフロアで気軽に相談できるという利便性は、資金提供だけでなく、事業成長を後押しするメンタリングが日常的に受けられることを意味します。現在は支援プログラムの1期が終了し、2019年(令和元年)6月以降に「2期生」企業が入居を予定しており、スタートアップ界隈では大きな期待が寄せられています。
東京駅周辺エリアは、大手企業や金融機関が集まる場所柄、今後は特に法人向けサービスを手掛けるIT(情報技術)企業、とりわけSaaS(サース:Software as a Service)を提供する企業がさらに集まると予想されています。SaaSとは、クラウド経由でソフトウェアを提供する形態のことで、ユーザーはインターネット接続さえあればどこでもサービスを利用でき、サブスクリプション型で提供されることが多いビジネスモデルです。コーラル・キャピタルの吉沢美弥子シニアアソシエイトは、「渋谷はモバイルゲームや個人向けサービスが多い。東京駅周辺には法人向けやSaaS系のスタートアップが増えることに期待している」と、このエリアの将来性に太鼓判を押しています。****
🌍国内外の巨大IT企業も集結!新常態へのSNSの反響
外資系企業も、この新たな流れに加わっています。アメリカのスラック・テクノロジーズの日本法人が2019年(平成31年)3月に大手町パークビルに新オフィスを開設しましたし、同じくアメリカのセールスフォース・ドットコムの日本法人も2021年(令和3年)をめどに新社屋を設ける計画を進めています。これらの動きは、東京駅周辺が単なる日本のビジネスの中心地というだけでなく、グローバルなIT企業の重要拠点としての地位を確立しつつあることを示しています。
このような状況に対し、SNS上では「渋谷より大手町の方が大企業との提携チャンスが多くて合理的」「家賃が高そうだけど、それに見合う価値がありそう」「金融機関との連携を考えたら最適解だ」といったポジティブな反響が多く見受けられます。大手企業と国内外のスタートアップ、そしてVCが融合しあう新たな「生態系」の形成が、まさに今、東京駅周辺でダイナミックに始まっているのです。これは、日本のイノベーションの未来図を塗り替える、極めて重要な動きだと言えるでしょう。このエリアから生まれる革新的なビジネスが、日本経済をさらに力強く押し上げていくことを強く期待しています。
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