大手製薬会社のロート製薬が、正社員の副業を積極的に認める「社外チャレンジワーク制度」を導入し、話題を集めています。この画期的な制度は2016年2月に始まり、2019年6月3日時点で、すでに約70名の社員が利用している状況です。ロート製薬は、主力のスキンケアや目薬だけでなく、農業や再生医療事業など、幅広い分野に事業を展開しており、社員の多岐にわたる経験が活きる土壌が整っていると言えるでしょう。
ロート製薬がこの制度を始めた背景には、「1つの会社だけでは個人の成長に限りがある。外にも目を向けないといけない」という強い思いがあります。社内プロジェクトのリーダーを務めたメディア&プロモーション部の墨田康男副部長は、この狙いを熱く語っています。約40名の社員が半年間にわたる合宿などで議論を重ね、「個人の成長」をテーマに編み出されたのが、この柔軟な働き方を可能にする制度なのです。
制度の対象となるのは、国内に約1400名いる正社員のうち、勤続3年以上の社員です。社員は就業時間外や休日を利用して、社外での仕事に取り組みます。希望者から提出された届け出を、人事総務部が情報漏洩の危険性や本業への支障、そして健康面での問題がないかを詳細にチェックしたうえで、部署の上司と相談して最終決定される仕組みです。人事総務部の山本明子副部長によれば、「基本的に副業をとめることはほぼない」とのことで、会社として社員のチャレンジを後押しする姿勢が伺えます。
この制度を利用する社員たちの副業先は、薬剤師や大学のキャリアセンターなど、実に様々です。そして、副業で身に付けた新しい能力が、ロート製薬での本業に大きな相乗効果をもたらすケースが生まれています。たとえば、ロート製薬で農業や食品関連の仕事に携わる市橋健さんは、ご自宅がある奈良市でクラフトビール造りを副業として手掛けています。このビール醸造を通じて、営業や経理といった多岐にわたる業務を経験した結果、「ロートでも違う部署の考えを理解できるようになった」と、本業への好影響を実感しています。
また、別の人事総務部の社員は、大学のキャリアセンターで学生の就職活動を支援するアドバイス業務を行っています。この経験から、就職活動中の学生たちの考え方を深く理解することができ、競争が激化しているロート製薬の新卒採用にもその知見を活かせているそうです。山本副部長も「本業への支障はない。むしろ相乗効果が出ている。個人の自立が会社の成長につながる」と、この取り組みの成功に自信を見せています。会社としては、今後、副業制度の利用者数を100人にまで増やしていきたい考えです。
「ダブルジョブ制度」で社内経験も多様化
ロート製薬が社員の成長を支援する取り組みは、社外に留まりません。副業制度以外にも、社内の複数の部署や担当を兼務できる「社内ダブルジョブ制度」も導入されており、こちらは約60名の社員が活用しています。たとえば、営業部と人事総務部を兼務するといった事例が生まれている状況です。異なる部署を掛け持ちすることで、社内でも多角的な視点や知識を身に付けることが可能となり、結果として社員のスキルアップを促していると言えるでしょう。
ロート製薬の積極的な副業解禁は、「個人の成長を支援し、それが企業の成長に繋がる」という理想的なサイクルを実現するための、非常に先進的な取り組みであると私は考えます。会社として情報管理や健康管理などのリスクをしっかりチェックしつつ、「基本的に止めない」という姿勢を貫いている点は、社員に対する信頼の証であり、まさに「個の力を最大化する働き方改革」の成功例の一つとして、今後も注目すべきでしょう。社員が他流試合で培った経験は、主力のスキンケアや目薬事業だけでなく、将来の柱となる再生医療事業など、幅広い分野で活きる可能性を秘めていることでしょう。
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