みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は、2019年6月3日までに日本経済新聞の取材に応じ、今年度からスタートする新たな中期経営計画について、「収益の構造を変える」という強い決意を表明されました。従来の延長線上に留まらない、バックキャスティングという手法を用いて策定された異例の5カ年計画です。これは、ゴールから逆算して今やるべきことを決める考え方であり、デジタル化や少子高齢化という激変する時代環境に対応するため、あえて期間を長く設定したと説明されています。
坂井社長は、計画達成に向けて「批評だけでは何もならない」と述べ、何よりも「実行力」を重視する姿勢を鮮明にされています。組織全体が「内向きの殻を破る」ことを目指し、社内の抜本的な変革に着手するということです。インターネット上では、この「批評家は不要」という社長の言葉に対し、「現場を変えようというトップの覚悟が伝わる」「行動を促す強いメッセージだ」といった肯定的な意見が多く見受けられ、企業文化の変革への期待が高まっています。
収益目標としては、2018年度との比較で、連結業務純益(本業の儲けを示す指標で、金利収入や手数料収入などから経費を引いたもの)を実質3,000億円引き上げ、9,000億円を目指すとのことです。この9,000億円という水準自体は、過去に達成した実績があるため、実額としては突出して高くはないものの、重要なのは収益の「質」の改善であり、市場変動の影響を受けにくい安定収益源の比率を高めることで、マイナス金利政策導入前を上回る収益構造を目指す計画です。
収益の「トップライン」、つまり売上高をどのように伸ばすかという点については、リテール部門(個人や中小企業向け)では、住宅ローンや中堅企業向け融資収支が数百億円単位で悪化するという厳しい前提に立っているそうです。この減少を補うために、ソフトバンクと共同出資するJスコアのような消費者向け融資ビジネスを伸ばすほか、独自のデジタル通貨であるJコインペイなども収益に貢献すると期待されています。新規ビジネスは初期費用が先行するものの、計画期間の後半から大きく成長し、収益貢献の確度が高い分散の効いたポートフォリオになっているとのことでしょう。
🚀 収益の柱は「トランザクション」と「事業承継」
海外部門においては、アジア圏でのトランザクションバンキング(企業の送金、決済、貿易金融などのサービス)が安定的な収益向上の大きな支えになると見ています。この決済ビジネスは、企業の日常的な経済活動に深く関わるため、景気変動に左右されにくい安定した収益源となるのが特徴です。また、国内では、手数料収入を上積みする戦略の目玉として「事業承継」を挙げられています。
事業承継では、親族への相続だけでなく、M&A(合併・買収)など親族外への承継が増加傾向にあります。このとき、金融資産だけでなく、不動産も必ず動きます。みずほFGは信託銀行を傘下に持ち、不動産仲介業務で業界トップ級の実績を誇るため、この強みを活かす考えです。不動産やリサーチ部門といった、グループの圧倒的な強みを掛け合わせることで、お客様の多様なニーズに対応し、収益機会を拡大していく方針を示されました。
💡 行動変革を促す「社内兼業」制度
企業文化の変革に向けた施策として、人事制度の改革にも踏み込まれます。その一つが「社内兼業」の解禁です。これは、社員が本業とは別に、週のうち数日、希望する別の部署で働くことを可能にする制度で、社員のスキル向上や部門間の連携強化を促し、「行動」を重視する企業風土を醸成するのが狙いです。さらに、社外でも経営人材を求める企業や、事業承継案件での兼職も進め、多様な知見をグループ内に取り込む方針です。
坂井社長の「走りながら考える」という言葉は、机上の空論ではなく、とにかく行動を起こして試行錯誤を繰り返すことの重要性を物語っています。私は、金融業界全体が大きな転換期にある今、みずほFGが大胆な経営計画と人事改革を打ち出し、「実行力」を最優先する姿勢は、組織全体に活力を与え、競争力を高める上で極めて重要であると考えます。2020年後半に丸の内に新たなビルが完成するのに合わせ、銀行・信託・証券の本社機能と営業機能の再編も進め、ハード・ソフト両面から改革を加速させることでしょう。
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