2019年07月10日、JTBの高橋広行社長は、これまでの旅行ビジネスのあり方を根本から覆す、極めて重要な方針を打ち出しました。従来のようなツアーの手配を通じて手数料を得る「コミッション型」のモデルは、すでに限界を迎えているのかもしれません。これからは顧客が抱える悩みを解決し、その専門性や提案力に対して対価を支払ってもらう「フィー(報酬)型」への転換が不可欠であると、力強く宣言されています。
近年、インターネット旅行会社の台頭によって、誰もが手軽に宿泊施設や交通機関を予約できる時代へと変化しました。このような激しい競合環境の中で生き残るためには、単なる予約代行ではない独自の存在意義が問われています。高橋社長が目指すのは、他社には真似できない「付加価値の高いビジネスモデル」の確立です。それは、消費者が支払う金額以上の満足感や体験を、いかにして創造できるかという挑戦であるともいえるでしょう。
具体策として、店舗の役割も大きく様変わりしようとしています。今後は、スタッフによる「コンサルティング」の質を極限まで高めていく方針が示されました。コンサルティングとは、単に目的地を案内するだけでなく、対話を通じて客観的な分析を行い、最適なプランを導き出す専門的な相談業務を指します。旅行のプロが一人ひとりの要望を深く汲み取り、オーダーメイドの感動を提供する姿勢こそが、これからのJTBの強みとなるはずです。
注目すべきは、記念日のための特別なレストラン予約など、これまで以上に細やかでパーソナルなサービスに注力する点です。こうした「痒いところに手が届く」おもてなしの精神は、SNS上でも「ネット予約では得られない安心感がある」「記念日を任せられるのは心強い」といった期待の声を集めています。デジタル化が進む現代だからこそ、あえて対面の価値を再定義し、人間の温かみを感じるサービスを追求する姿勢は、多くのファンの心を掴むに違いありません。
編集者としての視点から述べさせていただくと、この「フィー型」への移行は、日本のサービス業全体が直面している課題への正解だと感じます。労働の対価を手配作業という「作業費」に求めるのではなく、専門知識や企画力という「知的能力」に求めるべきだからです。JTBがこの変革に成功すれば、日本の旅行業界におけるプロフェッショナリズムの地位は、さらに向上することでしょう。業界の巨人が見せる新たな挑戦から、今後も目が離せません。
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