焼き鳥の定番メニューとして老若男女から愛される「せせり」は、鶏の首周辺からわずかしか取れない希少な部位として知られています。この美味しい部位を食卓へ届けるため、これまでは熟練の作業員が一本ずつ手作業で切り出しを行ってきました。しかし、鹿児島県曽於市に拠点を置く食肉加工機械のスペシャリスト、マトヤ技研工業がこの常識を打ち破る画期的な装置を開発したのです。
2019年07月11日、同社が発表した「せせり自動切剥機」は、これまで人の手に頼り切りだった工程を劇的に効率化させるポテンシャルを秘めています。専用の円形テーブルに鶏の首部分をセットするだけで、鋭い回転丸刃が魔法のように肉を切り出し、ベルトコンベヤーへと送り出します。同時に、食べられない硬い骨やガラは自動で選別されて排除される仕組みとなっており、まさに職人技を機械化したような驚きの技術と言えるでしょう。
驚くべきはその圧倒的なスピードで、1時間あたりに処理できる羽数はなんと2400羽にものぼります。これは従来の手作業と比較して、およそ3倍から4倍という驚異的な処理能力を誇る計算になります。SNS上でも「これほどのスピードで処理できるなら供給が安定しそう」「人手不足の救世主になるのでは」といった期待の声が寄せられており、業界内外から熱い視線が注がれていることが伺えます。
技術革新がもたらす食肉加工現場の劇的な変化
この装置が画期的なのは、単に速いだけではなく、食鳥工場が抱える深刻な人手不足という社会課題に真っ正面から向き合っている点です。機械による切り出しでは、1羽あたりの収穫量が平均30グラムと手作業に比べれば僅かに及ばない面もあります。しかし、労働力不足によってせっかくの部位を処理しきれず廃棄せざるを得なかった現場にとっては、全量を確実に製品化できるメリットは計り知れません。
専門用語で言えば、この装置は「歩留まり(原料から得られる製品の割合)」と「生産性」の究極のバランスを追求した結果だと言えます。2300万円という価格設定は一見すると高価に感じられるかもしれません。しかし、長期的な人件費の抑制や、安定した供給体制の構築を考えれば、多くの企業にとって極めて戦略的な投資価値を持つはずです。食の安全と安定供給を支える鹿児島の技術力には、目を見張るものがあります。
私自身の見解としても、こうした自動化技術の進歩は、日本の食文化を守るために不可欠なプロセスであると考えています。職人の高齢化が進む中で、テクノロジーがその技術を補完し、貴重な資源を無駄なく活用する姿勢は、持続可能な産業のあり方を提示しているのではないでしょうか。この装置の普及により、私たちが大好きなせせりが、より身近で安定して楽しめるようになる未来が楽しみでなりません。
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