2019年6月5日、世界銀行が発表した最新の世界経済見通しは、世界中に大きな衝撃を与えています。今年の世界全体の成長率は、前回の1月時点の予測から0.3ポイントも下方修正され、2.6パーセントになる見込みだと明らかにされました。この引き下げ幅は、過去3年間で最も大きなものとなり、世界経済の減速が鮮明になったと言えるでしょう。
この下方修正の背景には、主に米中間の貿易摩擦の激化があります。2019年に入り、貿易の量や企業による投資が鈍化しているためです。世界銀行は、現在の状況が「リスクははっきりと下振れ方向にある」と強く警告しており、アメリカと中国の貿易交渉の行方によっては、さらに見通しが悪化する懸念があることを示唆しています。
特に注目すべきは、貿易量の予測の大幅な引き下げです。2019年の世界の貿易量は、前年比で2.6パーセント増と予測されており、これも1月時点の予測から1.0ポイントも引き下げられました。これは、2008年の金融危機以降で最も弱い伸びとなる見通しで、米中貿易戦争に加え、年明け以降、半導体などの資本財(企業が生産活動に用いる設備や機械など)の貿易や受注が落ち込んでいることが原因です。
インターネット上でも、「米中貿易戦争の影響がここまで大きいとは…」「世界の景気後退が現実味を帯びてきた」といった不安の声が多数寄せられています。なかには、「私たち消費者の生活にも響いてくるのでは?」と、自身の生活への影響を懸念する意見も見られます。この見通しは、単なる数字ではなく、世界中の企業や人々の活動に直結する重要な指標なのです。
世界経済の「エンジン」に潜む影:主要国・地域への影響
世界銀行は、今回の予測において、2019年5月以降の米中貿易摩擦の激化を考慮に入れています。ただし、アメリカ政府が検討している3000億ドル(日本円でおよそ32兆円)分の中国製品に対する追加関税や、メキシコへの関税発動といった、さらなる強硬策はまだ前提としていません。
主要国の成長率を見ると、中国は6.2パーセント、アメリカは2.5パーセントと、どちらも1月時点の予測は据え置かれています。これは、追加関税の影響がまだ織り込まれていないことに加え、中国が実施している経済対策が下支えとなっているためでしょう。しかし、世界銀行は、これまでの貿易の鈍化によって「生産活動の影響はすでに世界へと広がっている」と指摘しています。
ユーロ圏の成長率は、1月時点から0.4ポイント低い1.2パーセントに引き下げられました。また、中南米や中国以外のアジアの地域も下方修正されています。私たちの住む日本の成長率も、0.1ポイント低い0.8パーセントという予測になっています。世界規模での貿易の減速は、輸出に頼る多くの国々にとって、非常に大きな打撃となっているのです。
私自身の見解としては、この世界銀行の警告は、グローバル経済の脆さを浮き彫りにしています。特定の二大国の対立が、これほどまでに世界の成長の足を引っ張るという事実は、国際協調の重要性を改めて示しているのではないでしょうか。貿易を武器とする行為は、長期的にはどの国にもメリットをもたらさないでしょう。
回復への期待と多くの不確実性
世界銀行は、2020年の世界全体の成長率については2.7パーセントと、わずかながら改善を見込んでいます。しかし、この回復が予測通りに進むかどうかは、非常に不確実であると言わざるを得ません。世界銀行自身が、貿易摩擦のほかにも、途上国の債務借り換え(国が抱える借金を新たな条件で借り直すこと)や金融市場の動揺など、多くの下振れリスクを挙げているからです。
特に、途上国の債務問題は、一度危機が表面化すれば、世界経済全体に波及する可能性を秘めています。今後、アメリカと中国が建設的な対話を通じて貿易摩擦を解消できるか、そして各国が適切な経済対策を講じられるかが、この「減速の波」を乗り越えるための鍵となるでしょう。
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