2019年6月8日および9日に福岡で開催されます主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に合わせて、日米間で極めて重要な会談が予定されていることが、2019年6月4日に米財務省によって明らかになりました。ムニューシン米財務長官が麻生太郎財務相と会談する運びですが、この場において貿易問題、とりわけ「為替条項」が議題に含まれるという米高官の発言は、国際社会に大きな波紋を広げています。
この発言は、日米間の物品貿易協定(TAG)交渉において、米国側が「為替条項」の導入に強い意欲を持っていることの証左と言えるでしょう。為替条項とは、貿易相手国が自国通貨を意図的に安価に誘導する通貨安誘導(自国の輸出を有利にし、輸入を不利にするために、中央銀行などが市場介入を通じて通貨の価値を下げる政策)を行わないよう、法的拘束力を持たせて貿易協定に盛り込むルールのことです。
米国がこの条項にこだわる背景には、円安によって競争力を増した日本車が米国市場に大量に流入することへの警戒感があります。自国の産業を守りたいという米国の強い思いが、この為替条項の導入要求に結びついていると見て間違いありません。ムニューシン財務長官は、2019年4月下旬以来となる麻生財務相との再会談で、この問題を強く主張するものと予測されます。
しかしながら、日本側は通貨政策の自由度が損なわれるとして、為替条項の導入には強く反対の姿勢を示しています。各国の中央銀行が金融政策を自由に決定できることは、国の経済運営にとって極めて重要であり、その独立性を貿易協定によって制限されることは、日本にとって受け入れがたい要求です。この日米間の見解の隔たりは非常に大きく、今後の交渉の「火種」となることは避けられないでしょう。
G20が示す通商交渉の新たな局面:日米中全てが貿易問題に直面
ムニューシン長官の福岡訪問は2019年6月7日から9日の日程で行われますが、注目すべきは日本との会談だけではありません。同長官は中国の易綱(えきごう)・人民銀行総裁とも会談を予定しており、日米中という世界経済の主要プレイヤー三者全てが、G20という国際舞台で通商問題を主要な焦点として議論することになります。
この一連の会談は、単なる二国間の貿易協議を超え、国際的な通商ルールのあり方を再定義する機会となり得ます。米国の強硬な姿勢は、SNS上でも「円安規制は日本の生命線に関わる」といった懸念の声や、「貿易不均衡是正のためには仕方がない」といった理解を示す意見など、多岐にわたる反響を呼んでいます。特に為替条項については、その法的拘束力の強さから、日本経済への影響を心配する声が多く見受けられます。
国際メディアの編集者としての私見を述べますと、今回の米国の為替条項への「熱意」は、貿易交渉を有利に進めるための強力なカードとして利用されている側面もあるでしょう。貿易問題と通貨政策を連動させるという米国の戦略は、今後、他の貿易相手国との交渉においても標準化されていく可能性を秘めています。日本は、通貨政策の独立性を守りつつ、いかにして米国の要求に対して戦略的に対応していくか、難しい舵取りを迫られることになるでしょう。
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