【2019年最新動向】機関投資家が突きつける「社外取締役3分の1未満なら反対」の厳しい新基準!日本企業のガバナンス改革は加速するのか?

2019年6月5日、日本企業の経営監視体制が大きな転換点を迎えています。これまで以上に厳しい視線を向けているのが、国内外の機関投資家と呼ばれる大口の株主たちです。彼らは、企業の株式を大量に保有し、その議決権を通じて経営に対して大きな影響力を持つ存在ですが、このたび、企業の取締役選任議案に対する投票基準を一段と厳格化しました。

具体的には、三井住友トラスト・アセットマネジメントやスイス系のピクテ投信投資顧問といった主要な機関投資家が、社外取締役が全取締役の3分の1未満である企業に対しては、反対票を投じるという新たな基準を打ち出しました。社外取締役とは、その企業グループの出身者や業務執行に関わらない外部の人材を指し、経営陣から独立した立場で、客観的に経営を監視・監督する役割を担います。

この動きは、来る2019年6月下旬から本格化する株主総会において、企業側と株主側の間で、激しい議論が交わされることをほぼ確実にしています。ピクテ投信投資顧問は、社外取締役が3分の1未満の企業に対しては、経営トップの選任案そのものに反対するとしています。一方、三井住友トラスト・アセットマネジメントは取締役全員の選任に反対する方針ですが、今年は経過措置として、**自己資本利益率(ROE)**の水準に問題がない企業は除外するとしています。ROEとは、企業の自己資本(株主が出資した資金など)を使って、どれだけの利益を上げたかを示す指標で、収益性の高さを測る重要な物差しです。

これらの厳格な新基準は、主に大手企業に見られる「指名委員会等設置会社」や「監査等委員会設置会社」といった、経営の「執行」と「監視」の役割を明確に分離している統治形態の会社を対象としています。さらに、三菱UFJ信託銀行も「取締役が15人以上なら3人以上の社外取締役を求める」という基準を新設し、2020年4月以降は社外取締役が3分の1未満なら全取締役の選任に反対する方針です。また、JPモルガン・アセット・マネジメントに至っては、「将来的には社外取締役は過半数が望ましい」という文言を基準に加え、さらなる改革を促す姿勢を示しています。

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「質」も厳しく問われる社外取締役の役割

機関投資家が求めているのは、単に社外取締役の「数」だけではありません。その「質」に対しても、非常に厳しく目を光らせる動きが顕著になっています。例えば、米系のブラックロックは、取締役会への出席率が75%未満であり、かつその欠席理由に納得できる説明がない場合には、再任に反対するとしています。これは、社外取締役が名ばかりの存在ではなく、実際に責任をもって経営監視の役割を果たしているかをチェックする狙いがあるのでしょう。

さらに、米系のフィデリティ投信は、「株式を政策保有する企業からの社外取締役は独立性がない」と明確に述べています。政策保有とは、純粋な投資目的ではなく、取引関係の維持や強化といった目的で、互いに相手の会社の株式を持ち合うことを指します。このような関係にある企業から社外取締役を受け入れることは、本当に独立した立場で経営を監視できるのか、という疑念が生じるため、独立性に欠けると判断されるわけです。こうした厳しい視線は、社外取締役による「外部の目」での監視を強化し、企業の収益性や**企業統治(ガバナンス)の改善を促すという明確な意図に基づいています。

こうした機関投資家の強い要求は、日本政府が定めた企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)**の規定よりも、一歩も二歩も踏み込んだ内容になっています。企業統治指針は2018年に改定されたものの、社外取締役の人数については「3分の1以上が必要と考える会社は十分な人数を選任すべきだ」という、やや緩やかな表現に留まっています。しかし、2017年度の時点で、指名委員会・監査委員会設置会社であっても、社外取締役が3分の1に満たない企業が半数近くを占めているという現状があります。この事実からも、日本企業がより高いガバナンス水準を達成するためには、株主側からのさらなるプレッシャーが必要だと考えられるのでしょう。

長年の課題「なり手不足」の克服が鍵

日本企業は、長年にわたり内部昇格者を中心とした経営陣で構成されることが多く、この「同質性の高さ」が、規律の緩みを生み、結果として収益性の低迷や不祥事につながりやすいという指摘が以前からあります。機関投資家が求めるのは、このような内向きな経営体質から脱却し、多様な視点や外部の知見を経営に取り込むことで、企業価値を高めることです。しかし、この改革には大きな課題が存在しています。

それが、**社外取締役の「なり手不足」**という根深い問題です。経済産業省が2018年に発表したアンケート調査によると、「社外取締役探しに困難はない」と回答した企業はわずか2割に留まっています。このため、一人で複数の会社の社外取締役を兼任したり、経営実務にあまり詳しくない学者や元官僚などを登用したりといったケースも散見されており、形式的な独立性を満たしているだけで、実質的な経営監視能力に疑問符がつく例もあります。私見ではありますが、企業経営の透明性と健全性を高めるためには、専門的な知識と豊富な経験を持ち、かつ独立性の高い優秀な人材を、いかに社外取締役に迎え入れられるかが、今後の日本企業にとって極めて重要な課題となるでしょう。

もちろん、社外取締役が多いからといって、それが経営改善に直結し、不祥事が一切なくなるわけではありません。実際に、社外取締役の人数が多い企業で不祥事が起こった事例も存在します。企業の真のガバナンス強化とは、単に人数を増やすという形式論ではなく、いかにして「外部の知見」を効果的に経営戦略や意思決定のプロセスに取り込み、実効性のある監視体制を築けるかという、企業側の創意工夫にかかっていると言えるでしょう。今回の機関投資家の厳格化は、企業に対し、コーポレートガバナンスの在り方を根本から見直し、実質的な改革を加速させるための、強いメッセージだと捉えるべきでしょう。

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