2019年6月12日から14日にかけて、安倍晋三首相がイランを訪問されることが決定し、大きな注目を集めています。これは現職の日本の首相としては、1978年の福田赳夫氏以来、実に41年ぶりの快挙となります。さらに、1979年のイラン革命以降では初めての訪問であり、その歴史的な意義は計り知れません。首相はイランの最高指導者ハメネイ師やロウハニ大統領との会談を調整中で、緊迫する米国とイランの関係において、日本が仲介役として重要な役割を果たすことを目指していらっしゃるのです。
この仲介役としての訪問は、5月25日から28日にかけてトランプ米大統領が来日された際に、その具体的な方向性が固まりました。特に、5月26日の夜、東京・六本木の炉端焼き店で開かれた首相とトランプ大統領の夕食会でのやり取りが、事態を動かす決定打となったようです。トランプ大統領から「ところでイラン情勢のことだが……。日本とイランとの友好関係は知っている。シンゾウがイランに行くつもりなら急いで行ってきてほしい。私は軍事衝突を好まない」と、首相への強い要請があったと伝えられています。
これに対し、首相は、この会談のわずか10日ほど前にイランのザリフ外相からも訪問要請を受けていたことを伝達し、自身の6月12日から14日のイラン訪問について、米国側の理解を得られたとのことです。そして翌27日午前の日米首脳の会談では、対イラン強硬派として知られる**ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)**が異例の同席をし、首相のイラン訪問に対し「グッドタイミングだ」と発言したことから、米政権全体として日本の仲介を支持することが確認されました。水面下では、4月のワシントンでの日米首脳会談でも、かねてから首相のイラン訪問の意向を知るトランプ大統領の方から、早期訪問を促していたという情報もあり、日米の信頼関係の深さが伺えます。
🇺🇸🇮🇷高まる緊張、なぜ日本に仲介役が回ってきたのか?
本来、日本は欧米諸国に比べ、中東地域への外交的な影響力は決して強いとは言えません。それでも今回、米国が日本の仲介役を後押しした背景には、国際社会の構造変化があります。2015年にイランの核開発を制限するために結ばれた核合意(正式名称:包括的共同行動計画)は、欧米が主導して成立しましたが、2017年にトランプ大統領が就任すると、2018年5月にはこの合意からの離脱を表明し、イランへの経済制裁を再開しました。これにより、合意を推進した欧州各国は政権基盤が揺らいでおり、トランプ大統領とも距離があるため、橋渡し役としての役割を果たせなくなってしまったのです。
その点、日本は伝統的にイランと友好的な関係を築いており、これまでも欧米主導の対イラン制裁に対しては、慎重な姿勢を示してきました。過去に中東で日本独自の外交が大きな成果を上げてきた実績は少ないかもしれませんが、今回の決定は「シンゾウ・ドナルド」と互いに呼び合うほど親密なトランプ大統領との個人的な信頼関係が大きく作用し、日本に仲介役が巡ってきたものと見ています。この信頼の絆こそが、日本の外交力を高める鍵となる、と私は確信しています。
💥イランの対抗措置と米国の思惑:難航が予想される交渉
しかしながら、今回の仲介の道は非常に険しいものです。イランは米国による制裁再開への対抗措置として、5月には核合意の履行の一部停止を宣言しました。また、同月にはホルムズ海峡付近でサウジアラビアのタンカーが「破壊工作」を受ける事態が発生し、イランの関与が指摘されるなど、情勢は厳しさを増しています。米国は、空母や戦略爆撃機の派遣を発表するなど、イラン周辺での緊張状態は継続している状況です。
そのような中で、ポンペオ米国務長官は6月2日に「前提条件なしでイランと対話する準備がある」と述べましたが、同時に原油禁輸制裁などの継続も表明されています。これに対し、イラン外務省は同日、「米国の言葉だけではイランは動かない。実際の行動を変えることが重要だ」との声明を出し、制裁の停止を強く要求しています。トランプ大統領が首相に「急いで行ってほしい」と伝えたのは、仲介役が不在のまま、この緊張状態が不測の事態、すなわち軍事衝突へと発展することを恐れたためでしょう。
かつて、米国はブッシュ(第43代)大統領がイランを北朝鮮やイラクとならび「悪の枢軸」と呼ぶなど、両国間の関係の悪さは極めて根深いものです。歴史的、宗教的にも複雑に絡み合う対立構造の中で、今回の首相訪問によって、米国とイランの対話の糸口が見いだせるかは不透明です。
💡日本の役割の重要性:過度な期待をせずに足元の緊張緩和を
この状況について、外務省幹部は「日本が対話を仲介するには、いまのイラン情勢は厳しすぎる」と率直に語っています。その上で「足元の緊張を緩和できれば、十分役割を果たしたことになる」と、今回の訪問の現実的な目標を強調されています。また、首相周辺も「トランプ氏と親しい首相が行くことに意味がある。過大な期待はしないでほしい」と、冷静な見解を示しています。
この歴史的な訪問が、米国とイランという二大国間の対立解消のきっかけとなるかどうかは、世界中のメディアやSNSでも「日本がどこまで食い込めるか」「平和への一歩となるか」といった熱い反響とともに、その行方が見守られています。私の意見としても、長年の対立がある中で、一足飛びに解決へ向かうことは難しいと考えますが、世界平和のためにも、この仲介外交の試みが、中東の緊張緩和に向けた小さな一歩となることを強く期待するものです。