なぜ米国はイランを「宿敵」と呼ぶのか?失敗が招いた緊張と、2019年現在の緊迫する中東情勢を読み解く

イランが核合意に基づく義務の履行を一部停止するという、極めて深刻な決断を下しました。2015年に成立し、同国の核開発を厳格に制限してきた国際的な枠組みが、今まさに崩壊の淵に立たされています。2019年7月現在、圧力を強める米国とイランとの対立は日を追うごとに激化しており、国際社会には一触即発の緊張感が漂っているのです。

こうした一連の対立の背景には、一体何があるのでしょうか。それを理解するためには、米国のこれまでの対中東政策が辿ってきた「失敗の歴史」を紐解く必要があります。2019年06月27日、主要20カ国・地域(G20)大阪サミットを翌日に控えた東京都内で、一人の女性政治家がマイクを握りました。その人物こそ、イランのマスメ・エブテカール副大統領です。

エブテカール氏は、女性初の副大統領として教育や社会進出の向上に尽力しており、女性の権利が制限されがちな革命体制のイメージを払拭する象徴的な存在です。彼女は講演で、予定時間を超えて熱弁を振るいました。「米国が守ろうとしているのは地域の平和ではなく、自国の利益に過ぎない」という彼女の言葉からは、長年にわたる両国の根深い不信感が如実に表れていました。

実は彼女、1979年11月に発生した「米国大使館占拠事件」で、占拠学生グループのスポークスパーソンを務めた経歴を持ちます。流暢な英語で革命の正当性を世界に発信した彼女の姿は、当時から変わらぬエネルギーに満ちていました。かつてのパーレビ王制下で米国にとって中東最大の同盟国だったイランは、このイスラム革命を機に「大悪魔」と呼ぶほどの敵対関係へと一変したのです。

スポンサーリンク

「最大限の圧力」が招くリスクと、背後に潜む「Bチーム」の影

当時の大使館員らが444日間も拘束された事件は、1980年の救出作戦失敗も含め、米国民の心に深い傷を残しました。米国の世論調査でイランが常に北朝鮮と「嫌いな国」の首位を争うのは、こうした歴史的背景があるからです。これに対し、トランプ大統領は「最大限の圧力」をかけることで、核合意の再交渉や弾道ミサイル開発の譲歩を引き出そうと画策しています。

この強硬姿勢の裏には、北朝鮮との対話で見せた「成功体験」を再現したいという思惑や、オバマ前政権の実績を塗り替えたいという強い執念が見え隠れします。しかし興味深いことに、トランプ氏は2019年05月の来日時、現体制の転換までは望んでいないと明言しました。これは、かつてブッシュ政権がイランを「悪の枢軸」と呼んで敵視した時代とは異なるアプローチです。

「悪の枢軸(Axis of Evil)」とは、2002年に当時のブッシュ大統領が名指しした、テロを支援し大量破壊兵器を保有するとされた国家群を指す言葉です。現在のホワイトハウス内には、こうした過去の強硬論を支持する勢力や、イスラエル、サウジアラビアといったイランを敵視する同盟諸国のネットワークが存在します。これらは、関係者の名前にちなんで「Bチーム」と呼ばれています。

トランプ氏は2019年06月に米軍無人機の撃墜を受けた報復攻撃を、実施直前の10分前に中止しました。再選を目指す大統領にとって、泥沼の戦争は避けたいのが本音でしょう。しかし、互いに出口のない挑発を繰り返す現在の状況では、意図しない偶発的な軍事衝突の危険が常に付きまといます。和平への道筋が見えない中、世界は固唾を飲んでその行方を見守っています。

SNS上では「中東で再び戦火が上がるのは勘弁してほしい」という懸念や、「米国の独善的な制裁が状況を悪化させている」といった批判的な声が多く見受けられます。一方で「イランの核武装は絶対に阻止すべきだ」という安全保障上の切実な意見も根強く、世論は大きく揺れています。一編集者の視点としても、歴史のしがらみが対話を阻む現状は、非常に危うい段階に来ていると感じざるを得ません。

コメント

タイトルとURLをコピーしました