製紙業界の「第三極」構想が終焉か。三菱商事と北越コーポレーション、13年におよぶ提携解消の衝撃と今後の行方

日本の製紙業界に激震が走っています。2019年07月20日、総合商社大手の三菱商事と北越コーポレーションは、13年間にわたって継続してきた業務提携に終止符を打ちます。かつては業界を牽引する王子ホールディングスと日本製紙に対抗する「第三極」を築くという壮大な構想が掲げられていましたが、その夢は道半ばで潰えることとなりました。

提携の解消が公表された際、北越側が発表を行ったのに対して、三菱商事側は「投資判断に影響しない」として沈黙を保った点が印象的でした。かつて紙パルプ業界の再編に情熱を注いでいた商事の姿勢が、今や冷え切っている現実を象徴しているかのようです。ネット上でも「一つの時代の終わりを感じる」「商事のドライな判断が際立つ」といった驚きの声が広がっています。

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ホワイトナイトから始まった13年の軌跡

両社の蜜月関係は2006年に遡ります。当時、業界最大手の王子製紙(現・王子ホールディングス)が北越製紙に対して、同意を得ないまま一方的に買収を仕掛ける「敵対的TOB」を強行しました。TOBとは株式公開買い付けのことで、市場を通さず株主から直接株を買い集める手法を指します。この窮地に現れた救世主が三菱商事でした。

三菱商事は、買収ターゲットとなった企業を助ける「ホワイトナイト(白馬の騎士)」として、第三者割当増資を引き受け、北越の独立を守り抜きました。この一件を機に、三菱商事はグループ内の三菱製紙と北越を統合し、巨大な勢力を形成するシナリオを描き始めたのです。しかし、その後の統合協議は難航を極め、2015年には販売子会社の統合さえも破談となるなど、誤算が続きました。

カリスマ経営者の「豪腕」とデジタル化の波

この再編劇の中心にいたのが、北越の岸本晢夫社長です。三菱商事出身の岸本氏は、圧倒的な行動力で大王製紙への出資を決めるなど、業界に旋風を巻き起こしました。しかし、その強引とも取れる手法は、競合他社や提携先からの反発を招く側面もあったようです。SNSでは「岸本社長のリーダーシップは凄いが、敵も作りすぎたのではないか」という冷静な分析も散見されます。

また、市場環境の劇的な変化も無視できません。世界的なデジタル化の進展により、雑誌や新聞などに使われる「洋紙」の需要は急速に縮小しています。三菱商事は2019年現在、収益性の低い事業を整理し、成長が見込める分野へ資金を移す「ポートフォリオ(事業の組み合わせ)戦略」を加速させています。今回の提携解消は、こうした時代の変化に合わせた必然的な選択と言えるでしょう。

編集部が見る「残された19%の株式」の意味

筆者の個人的な見解としては、今回の提携解消は単なる別れではなく、三菱商事による「経営の合理化」を象徴する出来事だと捉えています。商事はすでに大王製紙と組み、インドネシアでの紙おむつ事業など「生活資材」という川下分野へのシフトを鮮明にしています。もはや、将来性の危ぶまれる洋紙製造に固執するメリットはないと判断したのでしょう。投資家からの厳しい視線も、背中を押したに違いありません。

しかし、これで全てが終わったわけではありません。三菱商事は依然として北越コーポレーションの株式を約19%保有しています。2019年03月末時点で約236億円相当にのぼるこの株式を今後どう扱うかが、次なる業界再編の大きな鍵となるはずです。商事がこの株を手放す時、日本の製紙業界の勢力図は再び塗り替えられることになるでしょう。今後の各社の動きから、一瞬たりとも目が離せない状況が続きそうです。

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