日本経済新聞社と就職・転職支援の日経HRが2019年6月5日に発表した「大学イメージ調査」の結果は、企業の採用戦略における新たな潮流を示しています。この調査は、全国の上場企業と有力な非上場企業の人事担当者を対象に、採用した学生から見た大学のイメージなどを尋ねたもので、その結果から国公立大学の優位性が鮮明になったと言えるでしょう。
特に注目すべきは、総合ランキングで九州大学が栄えある首位を獲得した点です。2位の京都大学、3位の大阪大学と続き、上位14校をすべて国公立大学が占めるという結果は、政府が進める一連の「国立大学改革」、例えば新たな研究領域の開拓や組織の見直しなどが、企業からの評価として結実している可能性が高いと推察されます。
👑総合首位は九州大学!行動力と独創性が高評価の秘訣
総合ランキングでトップに輝いた九州大学は、「行動力」「対人力」「知力・学力」「独創性」の4つの評価項目の中でも、「行動力」と「独創性」でもトップ評価を獲得しており、その人材育成の取り組みが企業に深く浸透している様子がうかがえます。
九州大学は2018年に伊都キャンパスへの移転を完了し、その広大な敷地を活かして、IoT(アイ・オー・ティー:あらゆるモノがインターネットに繋がる技術)やAI(エーアイ:人工知能)といった先端技術の実証実験を積極的に推進しています。また、2014年度から「自律的に学び続ける人材育成」を目的とした基幹教育を導入している点も特筆に値します。
企業担当者からは、「他大学にはあまりない専攻科目がある」(製造業)といったカリキュラムの独自性や、「留学生と一緒に生活をする学生の数が多いと感じた」(電気機器メーカー)といったグローバルな学習環境に対する好意的な声が寄せられており、多角的な教育が評価に繋がっているのでしょう。
総合2位の京都大学と3位の大阪大学も、全ての評価項目で全体的に高い評価を受けており、国内トップレベルの研究・教育水準を維持していることが分かります。一方、私立大学で唯一、項目別でトップ3に食い込んだのは、「行動力」で2位となった神田外語大学でした。
神田外語大学は、単なる語学力だけでなく、専門スキル、異文化を理解する心、そしてあらゆる場面で臨機応変に対応できる人材の育成を目指しており、この教育方針が企業担当者にとって「行動力がある」というイメージに結びついたと考えられます。
📈採用意欲が高まる地方大学!福岡工業大学が堂々の1位に
「採用を増やしたい大学」のランキングでは、福岡工業大学が1位となり、地方大学の躍進が目立つ結果となりました。福岡工業大学は、学生が主体的に学ぶ学習(アクティブ・ラーニング)の促進に力を入れており、学生が自由に集まり、議論やグループワークができる共有スペースを設置するなど、充実した教育環境を提供しています。
企業担当者からは「学生支援が手厚い」(機械メーカー)との声が寄せられており、学生一人ひとりに対する手厚いサポート体制が採用意欲に繋がっているのでしょう。2位は富山大学、3位は香川大学と続き、いずれも地方の大学が上位を占めています。
富山大学は、2018年に富山銀行と協働で「採用イノベーションスクール」と称する講座を開講し、講義やワークショップを通じて新たな採用方法やインターンシップのあり方を模索するなど、企業との連携を重視しています。香川大学についても「産学連携に積極的で、企業とのアライアンス(連携)がうまい」(不動産業)と評価されており、地域社会や産業界との密接な協力体制が、企業からの期待を高めている最大の要因と分析できます。
「採用を増やしたい大学」の上位に地方大学が多く名を連ねた背景には、少子化や人手不足を背景とした新卒採用における「学生優位の売り手市場」があります。これまでの採用実績が少なかった地方大学の学生を積極的に採用することで、優秀な人材の確保を目指す企業の意図が明確に表れていると拝察いたします。
💡企業が求めるのは「コミュニケーション能力」と「主体性」
また、今回の調査では、企業が採用選考で特に重視する項目も明らかになりました。「非常に重視している」「重視している」を合わせた回答が最も多かったのは、**91%が回答した「コミュニケーション能力が高い」**という結果でした。
これに「主体性がある」(87%)、「チャレンジ精神がある」(81%)が続き、企業が学生に求めているのは、単なる知識・学力だけでなく、組織の中で円滑に業務を遂行し、自ら考え行動できる能力であることが再確認できます。この結果は、学生が自身の能力をどのようにアピールすべきか、また大学がどのような人材育成に注力すべきかという問いに対し、重要な示唆を与えていると言えるでしょう。
大学の取り組みに関するイメージ調査では、「就職支援に熱心に取り組んでいる」で広島修道大学がトップとなり、「会社説明会などが充実している」(鉄道)との声がありました。また、「授業の質の改善に熱心に取り組んでいる」イメージでは、昭和女子大学、京都女子大学、東北大学が上位にランクインしました。
本調査は、2019年2月18日から3月22日にかけて日経リサーチを通じて実施され、全上場企業と一部有力未上場企業4,779社のうち、2017年4月から2019年3月までの2年間で新卒社員の採用実績がある大学について、有効回答数815社を得て集計されたものです。この結果は、今後の企業と大学の関係性、そして学生の就職活動に大きな影響を与えるでしょう。
(なお、この調査の詳細は2019年6月6日発売のムック「価値ある大学2020年版」(日経HR)で詳しくまとめられています。)
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