働く人々の未来を大きく変える新たな指針が、2019年07月18日に厚生労働省から発表されました。政府が進める「働き方改革」の目玉とも言える「同一労働同一賃金」の制度が、2020年04月01日からいよいよ本格的にスタートします。これに合わせ、人材派遣会社には派遣社員の勤務年数やスキルに見合った賃金を支払うことが、法的に義務付けられることとなりました。
今回の施策の核心は、正社員と非正規雇用者の間にある「不合理な待遇差」を解消することにあります。現在、派遣社員の平均的な賃金は正社員と比較して約2割ほど低い水準に留まっているのが実情です。厚生労働省は具体的な数値目標を掲げることで、この格差を是正し、誰もが納得感を持って働ける社会の実現を目指しているのでしょう。
SNS上では、このニュースに対して「ようやく経験が正当に評価される」と期待を寄せる声が上がる一方で、「本当に給与が上がるのか」と懐疑的な意見も見受けられます。特に、現場での運用がどこまで徹底されるかについては、多くの労働者が高い関心を持って注視しているようです。編集部としても、この制度が単なる理想に終わらず、実効性を持つことを強く願っています。
経験3年で賃金3割増が目安に!能力を可視化する新指針の全貌
厚生労働省が策定した指針によれば、同じ業務で経験を積んだ場合、初年度に比べて3年後には賃金を31.9%引き上げることが基準として示されました。さらに1年勤めて業務レベルが向上すれば16.0%増、5年後には38.8%増という具体的な目安も設定されています。これまでは派遣先が変わるたびにリセットされがちだった給与体系に、明確な「昇給の物差し」が導入されるのです。
例えば、システムエンジニア(SE)の場合を想定してみましょう。当初の基準時給が1427円であれば、1年後には1655円、3年後には1882円へとステップアップする計算になります。ここで注目すべきは、キャリアの長さだけでなく「業務内容」も重視される点です。たとえ1年目であっても、3年目のベテランと同じ難易度の仕事をこなせば、同等の報酬を受け取る権利が発生します。
そもそも「同一労働同一賃金」とは、同じ仕事に従事している限り、雇用形態に関わらず同じ賃金を支払うべきという考え方を指します。これは、仕事の価値を「人」ではなく「職務内容」で評価する欧米型のスタイルに近い仕組みです。日本独自の年功序列や家族手当といった慣習に一石を投じる、非常にドラスティックな変化と言えるのではないでしょうか。
人手不足解消の切り札か、それとも雇い止めの引き金か
深刻な人手不足に悩む人材派遣業界にとって、この賃金底上げは優秀な人材を確保するための強力な武器になるはずです。給与水準が高まれば、潜在的な労働力である主婦層やシニア層の社会復帰を促す効果も期待できるでしょう。労働条件の改善は、社会全体の購買力を高め、経済の好循環を生み出す原動力になる可能性を秘めています。
しかし、バラ色の未来ばかりとは限りません。企業側からすれば、派遣社員の活用コストが増大することを意味します。コスト負担を嫌った企業が派遣社員の受け入れを制限したり、より安価な労働力や自動化への置き換えを急いだりする懸念も拭えません。良かれと思った制度が、逆に派遣社員の雇用機会を奪うという皮肉な結果を招かないよう、慎重な見守りが必要です。
2020年04月01日の施行以降、この指針に違反しても直ちに罰則が科されるわけではありませんが、労働局による行政指導の対象となります。コンプライアンス(法令順守)が厳しく問われる現代において、企業には誠実な対応が求められるでしょう。格差のない社会への一歩となるか、働き方の二極化を加速させるか。私たちは今、労働環境の大きな分岐点に立っているのです。