自動車産業の変革期に、マツダが主力車「アクセラ」を全面改良し、車名を新たに**「マツダ3(MAZDA3)」として2019年5月24日に発売しました。この「マツダ3」は、同社にとって全商品群刷新の「新世代商品群」**における第1弾となり、マツダの未来を占う重要な先導車と位置づけられています。これまでの殻を破る挑戦として、見た目の印象が大きく異なるセダンとファストバック、という二つの「顔」をラインアップし、変革への強い意欲を示しているのが特徴です。
開発責任者を務めた別府耕太主査は、この新モデルについて「誰もが羨望する車」こそがマツダの目指す答えだと語っています。奇をてらうのではなく、車としての基本である**「走る、曲がる、止まる」といった走行性能を極限まで突き詰めることに注力したそうです。また、移動時間を快適に過ごせる室内空間を、単なる心地よさでなく「心が動くレベル」**まで磨き上げることを意識したと強調しています。SUVや電動化、自動運転、シェアリングといった自動車産業を根底から変える構造変化が押し寄せる中での船出は容易ではなかったものの、世界に驚きを感じてもらうべく、開発チームは困難な道のりを乗り越えてきたのです。
マツダ3の大きな特徴は四つ挙げられます。一つ目は、セダンとファストバックそれぞれで個性を際立たせたデザインです。二つ目は、まるで自分の足で歩いているかのような自然な運転感覚。三つ目は、移動時間を色鮮やかにする上質な室内空間。そして四つ目は、運転者を主役とした安全性能の徹底的な追求でしょう。特に自然な運転感覚を実現するため、人間が不自然な揺れをどのように感じ、それをどう抑えられるのかを徹底的に人間工学的に研究したといいます。シートを含めた車両設計を根本から見直した成果は、今後の新世代商品群に共通する基盤となる特徴だと別府主査は説明しています。
同一車種でありながら、全く異なる個性を持つセダンとファストバックというラインアップは、通常のクルマづくりにおいては**「非常識」**ともいえるレベルのチャレンジです。従来の「アクセラ」では、セダンとファストバックに近いハッチバックがありましたが、部品の多くは後部ドアまで共通化されていました。しかし、「マツダ3」ではボンネット、フロントガラス、ヘッドライトといった一部を除き、ほぼ全てに手が加えられ、完全に別物といえるほどの仕上がりになっています。ライバル車を意識すれば、ここまでの手間をかける必要はないかもしれませんが、「誰もが羨望する車」という高い目標を達成するためには、本当に人の心が動くレベルに到達する必要があり、そのために妥協は許されなかったのでしょう。
この大胆な開発方針は、消費者への聞き取り調査によって決定されました。2015年春から秋にかけて欧米を巡った調査では、米国では**「自分らしくエレガント」であること、欧州では「何者にも縛られたくない」**というように、車に求める価値観が地域によって全く異なることが判明しました。この結果を受け、開発責任者とデザイン責任者の考えは一致し、セダンとファストバックに全く違う個性を与えるという方向性が固まったわけです。
しかし、挑戦の道は平坦ではありませんでした。量産へ移行するための最終段階の説明で、経営層から試作車を**「新時代の幕開けは飾れない。こんなのではない」と突き返されるという予期せぬ事態が発生しました。これは2018年半ば頃のことで、通常は最終段階でこのようなやり直しは稀であるため、開発責任者としては頭が真っ白になるほどの衝撃だったと述懐しています。突き返された原因は、目指すレベルに運転性能と乗り心地のバランスが到達していなかったことにありました。車がキビキビと自然に動く「剛性」と、静粛性など乗り心地の良さという「快適性」**は相反する要素であり、この両立が極めて困難だったのです。この「ダメ出し」以降、開発部門長たちが毎朝集まり、約1カ月間、各部品の成分や生産工程に至るまで微調整を繰り返し、最終的に目指すレベルへと到達することができたといいます。
マツダ3は、デザイン、新型エンジン、走行性能といったマツダが主眼を置く要素はもちろん、車内空間の細部にまで徹底的にこだわっています。例えば、音響面ではスピーカーの位置を音域ごとに変える工夫がなされており、内装には人の**「触覚」**を研究した素材を採用するなど、五感に訴えかける上質さが追求されています。新型エンジン技術、車体設計手法、デザインなどを見直したこのマツダ3の基本的な要素は、今後のSUVなどの全面改良にも引き継がれる予定となっており、その成否がマツダの持続的成長を左右するといえるでしょう。
このような妥協のない性能へのこだわりは、旧車種から性能が大きく向上した分、価格にも反映され、およそ1割ほど価格が上昇しています。これにより、マツダ3はこれまでの「アクセラ」よりも高価格帯までをカバーすることになりました。SUV人気が高まる中でも、セダン需要を価格も含めてうまく取り込みたい考えですが、この魅力がどこまで消費者に響くかが今後の課題です。開発者の別府主査は、セダンは40代半ばの男性、ファストバックは50代の男性を想定顧客としており、「経験が蓄積し、顧客の審美眼が高まっている。マツダ3は性能、デザイン含めて成熟させた」と自信をのぞかせています。車を単なる**「汎用品」**にはさせないという、マツダの真骨頂である独自性が、消費者へ強く響くのか注目される状況です。
この「マツダ3」の発表と発売に対するSNSでの反響は非常に大きいものでした。特に、セダンとファストバックの**「デザインの方向性が完全に分かれたこと」に対する驚きと歓迎の声が多く見受けられました。「同じ車名とは思えないほど個性が際立っていて、どちらのデザインも魅力的だ」という意見や、「マツダのデザインに対する妥協しない姿勢が素晴らしい」といったコメントが多数投稿されています。また、価格の上昇については「性能向上を考えれば妥当」とする声がある一方で、「もう少し価格を抑えてほしかった」という意見もあり、消費者側の期待の高さと、価格面でのジレンマが伺えます。しかし、全体としては、マツダが目指す「魂動デザイン」と「人馬一体」**の哲学が、この新モデルでさらなる高みに達したことへの賛辞が目立っています。
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