今、日本のものづくりを支える中堅・中小製造業の現場で、インターネットを活用した新たな取引支援の形が急速に広がりを見せています。これは、単なるデジタル化にとどまらず、これまで埋もれがちだったニッチで高度な専門技術を効率的にマッチングし、新たな事業として大きく育てていこうという動きです。具体的には、大手企業であるジェイテクトや日本特殊陶業といった企業が、それぞれの強みを活かした独自のオンラインサービスを開始し、中小企業の取引を力強くサポートしています。従来の慣行にとらわれない、非常に画期的な取り組みだと言えるでしょう。
機械部品などを手掛けるジェイテクトは、2019年3月から製造業マッチングクラウドサービス「ファクトリーエージェント」の試験運用を開始しています。このサービスは、板金加工やプレス加工といった業務を依頼したい企業と、それらの専門技術を持つ町工場などをインターネット上で結びつけるものです。すでに国内の中堅・中小金属加工業、実に3,000社以上が登録を済ませているとのことで、このサービスの可能性の大きさを物語っています。今後は切削・研削といったさらに幅広い加工分野にも対象を広げていく計画です。
依頼したい企業は、専用のウェブサイトから会員登録をするだけで利用でき、基本的な利用料は無料という手軽さも魅力です。一度の発注依頼に対して、平均3社程度の受注希望企業から見積もりが届く仕組みになっています。ジェイテクトは、受発注が成立した場合に、その一部を手数料として受け取るビジネスモデルです。さらに注目すべきは、製造過程の進捗管理から納品、検品といった一連の流れをすべてサイト内で完結できる点です。また、代金の支払いもサービスを通じて行われ、分割払いも選択可能となるなど、取引をスムーズかつ安心して行えるよう細やかな配慮がなされています。
ジェイテクトは、2017年4月に新規事業推進部を立ち上げるなど、新領域への挑戦に非常に積極的な姿勢を見せています。その第一弾として、2018年には、作業者が体に装着して重い荷物の持ち上げをサポートする「パワーアシストスーツ」を発売しました。そして、この秋には高耐熱性を特徴とする蓄電装置、いわゆる「キャパシタ」の量産を開始する予定です。キャパシタとは、電気エネルギーを物理的に蓄える装置で、バッテリー(化学反応を利用)と異なり、大電流の急速な充放電に優れ、長寿命という特性があります。同社は介護関連機器分野への参入も表明するなど、未来に向けた挑戦を加速させています。
安形哲夫社長は、新規事業の成功に向けた明確なルールを定めており、「3年で単年度黒字、長くても7年程度で累積損失を解消すること」を決まり事にしていると説明しています。最終的には新規事業を全売上高の1~2割程度にまで育てていきたいという強い意欲を示しており、このファクトリーエージェントもその重要な柱の一つとなるでしょう。中小企業の技術を活かしながら、自社の新しい収益源を確立するという、まさに「一石二鳥」の戦略だと思います。
🛠️遊休資産を有効活用!産業機器のシェアリングで新たな価値を
一方、日本特殊陶業は、2018年6月から産業機器などの貸し借りや売買を仲介するサービス「シェアリングファクトリー」を本格的に稼働させています。このサービスは、使用頻度が少ない設備機器や高価な計測器などを、必要とする企業に貸し出したり売却したりしたいという企業のニーズを捉えたものです。同社の子会社であるシェアリングファクトリー社がサイト運営を担っています。この取り組みは、資源の有効活用という現代的な課題にも応えるものであり、非常に意義深いと言えるでしょう。
サービス本格開始から約1年で、すでに400社が登録し、約650点の産業機器が出品されています。成約件数は約100件に上り、中には1,000万円を超える工作機械の売買実績もあるとのことです。特に高度な測定器などは、単に機器を貸し出すだけでなく、その機器を適切に操作するための専門的なスキルが不可欠です。そこでこのサービスでは、専門技術を持つ人材の出張サービスにも対応しており、利用者の利便性を高めています。
日本特殊陶業の関係者も「設備を持たないベンチャー企業が試験的に利用するなど、多様なニーズが存在する」と語っており、このシェアリングエコノミーの考え方が製造業においても着実に浸透しつつあります。高度で高価な設備を自社で保有せずとも、必要な時に必要な期間だけ借りて利用できるというメリットは、特に資金力に限りがあるベンチャー企業や中小企業にとって、技術開発や試作を加速させる上で計り知れない恩恵があるでしょう。
こうした中小製造業を対象としたマッチングサービスは、ジェイテクトや日本特殊陶業だけでなく、全国的に広がりを見せています。例えば、ものづくり支援を専門とするベンチャー企業のリンカーズ(東京・中央)が手掛けるサービスも有名です。現在では、トヨタ自動車や富士フイルム、コマツといった日本を代表する大手企業も利用実績を持つなど、その信頼性と有効性が証明されています。この一連の動きは、インターネットというインフラが、日本の製造業の**「専門性」と「資産」**を再定義し、新しい成長の時代を切り拓いていくことを予感させるものでしょう。
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