2019年07月18日まで、東京では世界の金融市場を揺るがす重要な会議が開催されていました。年金基金や資産運用会社が集う「国際コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(ICGN)」の年次総会です。加盟メンバーが運用する総資産は、なんと34兆ドル、日本円にして約3600兆円という天文学的な数字に達します。この巨大な投資家集団が東京に集結した事実は、日本の資本市場が今、まさに正念場を迎えていることを物語っているでしょう。
会場では大和証券グループ本社の日比野隆司会長とICGNのケリー・ワリング最高責任者が対談を行い、日本の企業統治、いわゆる「コーポレート・ガバナンス」が新しいフェーズに突入したことが強調されました。日比野氏は、改革がこれまでの形を整えるだけの段階から、中身を伴う「実質」を重視する段階へ移行したと語っています。コーポレート・ガバナンスとは、企業が不正を防ぎ、効率的な経営を行うために、株主などが経営を監視する仕組みを指す言葉です。
SNS上では「ようやく日本企業も本気で変わり始めたか」という期待の声がある一方で、「形だけ社外取締役を置いても意味がない」といった厳しい意見も見受けられます。確かに、日本版スチュワードシップ・コードが2014年に制定されてから6年が経過し、多くの企業が自己資本利益率(ROE)10%前後を達成しました。さらに、2名以上の社外取締役を置くことも今や常識となりました。しかし、この現状に満足している経営者がいるとするならば、それは少し楽観的すぎるかもしれません。
ICGNが今回の総会に合わせて発表した「重点課題」には、非常に具体的かつシビアな要求が並んでいます。例えば、有価証券報告書を株主総会の前に公表することや、CEOの個別報酬をもっと透明化すること、さらには企業同士で株を持ち合う「政策保有株式」をいつまでに、どれくらい減らすかを明示することなどが挙げられました。投資家の要求は常に細かく、かつ実利を求めています。日本独自のスタイルに固執するだけでは、世界から取り残されるリスクがあるのです。
アジア諸国との激しい競争と「株価」という最終回答
世界的な投資ファンドであるカナダのオンタリオ州教職員年金基金(OTPP)のロン・モックCEOは、今後5年で最も重視する市場はアジアだと明言しています。彼らは香港拠点を強化し、中国やシンガポール、韓国と同じ土俵で日本を比較しようとしています。かつてのように「先進国だから」という理由だけで投資を呼び込める時代は終わりを迎えました。監査体制や情報開示の速さにおいて、すでに他のアジア諸国に先行を許している分野さえ存在しているのが現実です。
振り返れば、2001年に東京でICGN総会が開かれた際、当時の日本企業経営者は「社外取締役など不要だ」と言い放ち、海外投資家を失望させたという苦い歴史があります。2019年現在、日経平均株価は当時から約8割上昇しましたが、アメリカのダウ平均が同時期に2.6倍も上昇したことに比べれば、その歩みはあまりに緩やかだと言わざるを得ません。投資家の本音は、日本企業にはまだ「株価を上げる」という執念が足りないという点に集約されています。
編集者としての私の視点では、日本の経営者が口にする「実質重視」という言葉が、改革の手を緩めるための免罪符になってはいけないと感じます。真の統治改革とは、投資家から選ばれ、結果として株価や企業価値が向上することに他なりません。世界中のマネーがアジアを注視する2019年、日本企業に求められているのは、自分たちの流儀を守ることではなく、グローバルスタンダードに自らを適応させ、目に見える成果を出し続ける覚悟ではないでしょうか。
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