日本が誇る世界のトヨタが生み出した「カイゼン」の波が、今や製造業の枠を超えて日本中に波及しています。2019年07月20日現在、人手不足や生産性の低迷に悩む水産業から、電力、航空業界に至るまで、この独自のメソッドが次々と導入されているのです。単なるコスト削減ではなく、現場の知恵を絞って「働きやすさ」と「効率」を両立させるこの動きは、現代の救世主といえるでしょう。
SNS上でもこのニュースは大きな関心を集めており、「製造業以外でも活用できるのは驚きだ」「現場の負担を減らす視点が素晴らしい」といった、ポジティブな反響が広がっています。特に働き方改革関連法が2019年に施行され、有給休暇の取得義務化などが始まった影響もあり、限られた時間で最大限の成果を出すための手段として、トヨタ式の思考法はかつてないほど重要視されています。
東北の復興を支えるマグロ漁の革新とトヨタ東日本の挑戦
トヨタ自動車東日本は2013年度から「相互研さん活動」という支援をスタートさせ、2019年03月末時点では東北6県と新潟県で103社をサポートするまでに拡大しました。特に東日本大震災の被災地である宮城県気仙沼市では、マグロのはえ縄漁にカイゼンを導入するという画期的な試みが行われています。はえ縄漁とは、数キロにも及ぶ長い幹縄に多くの枝縄を付け、その先の針にエサをつけて魚を釣る伝統的な漁法です。
過酷な漁の現場では、100キログラムを超える巨大なマグロを引き上げる作業が大きな負担となっていました。そこでトヨタは、重力と摩擦を利用した「スロープで滑らせる」というシンプルな仕組みを提案し、肉体的な負荷を劇的に軽減させたのです。現在はさらに一歩進んで、エサ付けや投縄作業の自動化を目標に掲げており、伝統的な漁業が最新の知恵によってスマートに進化しようとしています。
エネルギー業界と空の玄関口でも光る「無駄を省く」知恵
電力業界でも、自由化に伴うコスト競争に勝つための武器としてカイゼンが選ばれています。中部電力や東京電力では、火力発電所の定期点検において足場の組み方や試運転の手順を見直し、作業日数の大幅な短縮に成功しました。また、電柱に設置された電圧調整機器の交換工事でも、これまで順次行っていた作業を並行して進める手法を取り入れ、作業効率を飛躍的に高めているのが現状です。
一方、中部国際空港の保安検査場では、思わず膝を打つような工夫が導入されました。検査を終えた手荷物用トレーを、職員がわざわざ歩いて運ぶのではなく、傾斜をつけたレールで自動的に元の場所へ戻す仕組みです。「お金をかけずに物理法則を利用する」という発想は、まさにトヨタの精神そのものと言えます。こうした現場発のボトムアップな改善こそが、今の日本に最も欠けている視点ではないでしょうか。
働き方改革の鍵を握る労働生産性の向上とは?
なぜ今、これほどまでにカイゼンが求められているのでしょうか。日本生産性本部のデータによると、2017年の日本の時間当たり労働生産性は47.5ドルにとどまり、米国の72ドルと比較すると約3分の2という厳しい現状にあります。労働生産性とは、労働者1人が1時間あたりに生み出す成果を示す指標ですが、主要先進国の中でも日本は低水準に甘んじており、これを打破することが急務なのです。
少子高齢化で働く世代が減り、長時間労働が許されない時代において、根性論で成果を出す時代は終わりました。現場の声を吸い上げるボトムアップと、変革を後押しするトップダウンの両輪が揃って初めて、真のカイゼンは根付きます。編集者としての意見ですが、このトヨタの知恵は単なる仕事術ではなく、日本人が本来持っている「工夫する力」を再発見するムーブメントであると感じています。