近年、社会との関わりをほとんど持たずに自宅に留まる「ひきこもり」の状態にある方々への対策が、喫緊の課題として浮上しています。特に、中高年層のひきこもりが深刻化する中で、東京都はこれまで34歳以下に限定していた家庭への訪問相談の年齢制限を撤廃し、支援体制を抜本的に強化することを決定いたしました。この取り組みは、高齢化する親が中高年のひきこもりの子を支える「8050問題」と呼ばれる社会構造的な課題の解消に向けた、極めて重要な一歩と言えるでしょう。
この背景には、東京都練馬区や川崎市で発生した痛ましい事件があり、ひきこもりがちな中高年を抱え、親も高齢化している世帯への、より柔軟で包括的な対応が求められていることが明らかになったためです。支援の間口を広げることで、本人やご家族が抱える複雑な悩みに寄り添い、孤立を防ぐ狙いがあります。厚生労働省の根本匠大臣(当時)は「安易にひきこもりと(事件の原因を)結び付けることは厳に慎むべきだ」と、誤解や偏見が広がることに強い警戒感を示していますが、同時に、孤立世帯が増加することへの懸念は、社会全体で共有すべき現実なのです。
東京都が取り組んでいる**「サポートネット」は、ひきこもりの当事者やそのご家族を対象に、家庭への直接訪問のほか、電話やメールを通じて相談を受け付ける体制です。これまで「義務教育終了後の15歳からおおむね34歳まで」としていた支援対象を、この度35歳以上**の本人とそのご家族にも拡大することになりました。これにより、年齢に関わらず「6カ月以上ひきこもりの状態が続いている」方々に対し、行政の担当者が無料で相談に応じることになります。
具体的な相談支援としては、一人あたり5回までの無料相談を受け付け、担当者が丁寧に状況をヒアリングし、適切な支援内容を検討した上で、必要な関係機関を紹介する流れとなります。特に、メール相談は都のホームページ上で24時間受け付けており、対面や電話での相談に抵抗がある方でも、気軽に第一歩を踏み出しやすい環境が整備されています。これは、ひきこもりの方々にとって、心理的なハードルを下げる非常に有効な手段だと考えられます。
内閣府が2018年(平成30年)12月に全国で実施した訪問調査の推計によると、自宅に半年以上閉じこもっている40歳から64歳の中高年層のひきこもりは、なんと61万3千人にものぼります。この数字は、支援の対象が若年層だけでなく、中高年層にも拡大する必要性を明確に示していると言えるでしょう。この現状を前に、親の死後、子が自立できずに困窮したり、社会からさらに孤立したりする事例が今後各地で続出する可能性は否定できません。
このような中、東京都が中長期的な視野に立って、2019年(令和元年)6月5日に打ち出した今回の年齢制限撤廃という対策強化は、未来の孤立を防ぐための予防的な投資として非常に高く評価されるべきでしょう。SNSでも「ついに高齢者も対象になったか」「これで本当に困っている家庭が救われる」「一歩前進だ」といった、歓迎と期待の声が多数見受けられます。一方で、「担当者の専門性強化も同時に必要」「5回という制限は短いのでは」といった、さらなる支援の質的向上を求める建設的な意見も出ています。
私見になりますが、今回の都の決断は、ひきこもりという問題を決して「個人の怠惰」や「自己責任」として片付けず、社会全体で支えるべき課題として認識し始めた、大きな転換点だと感じています。特に8050問題は、将来的に生活保護費の増大など財政的な負担にもつながりかねないため、今回の相談窓口の拡大は、社会保障コストの適正化という観点からも、賢明な判断だと言えるでしょう。今後は、相談機関と地域の福祉が連携し、孤立を解きほぐすためのきめ細やかなサポートが提供されることに期待したいものです。
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