新潟県内に新たな風を吹き込む新興クラフトビールメーカーが、地域特産の原材料を大胆に取り入れたビール風アルコール飲料の開発に注力されています。これは、単なる新しいお酒づくりにとどまらず、地域の個性を引き出し、盛り上げていくための**「地産地消」**という強い想いが込められた挑戦といえるでしょう。特に、十日町市の妻有(つまり)ビールと、2019年5月に醸造施設を開設した弥彦村(やひこむら)の弥生(やよい)商店は、他社にはないユニークな特産品を用いることで、差別化を図り、地域おこしの新たな起爆剤となることを目指しています。
たとえば、妻有ビールが手掛けたのは、山に自生する**杏仁子(あんにんご)**の花を材料に使用した「柏崎ウィートあんにんごの花」というビールです。杏仁子とは、山地や丘陵地に自然と生えるバラ科の植物で、地元ではつぼみや花を塩漬けやおひたしにして食べるなど、古くから親しまれている食材です。この柏崎市産の小麦と十日町市産の杏仁子の花をブレンドしたこの一杯は、ビールの特徴である苦みを抑えて、代わりに花の甘く優しい香りがふんわりと漂うのが大きな特長となっています。この商品は1リットル入りで1,500円で販売されており、全国のクラフトビール専門店で購入できるとのことです。
妻有ビールの高木千歩(たかぎちほ)社長は、杏仁子を材料に選んだ理由について「地域の人にも好んで飲んでもらいたい」という願いを込めています。2017年に地域おこし協力隊員として十日町市に赴任した高木社長が創業し、翌2018年から本格的なビール生産をスタートされました。年間の醸造能力は1万8,000リットルと、他のメーカーと比較して小規模だからこそ、販路の開拓には限界があります。だからこそ、「地産地消」を前面に押し出し、地元住民からのファンを増やしていくことを理想としています。今後は、地元農家に栽培を委託しているホップを使ったビールの開発にも意欲を見せています。
私自身の考えですが、この地域に根差した小規模生産の取り組みこそ、クラフトビール本来の魅力ではないでしょうか。画一的な大量生産では味わえない、作り手の情熱と地域の風土が凝縮された逸品は、観光客はもちろん、地元の方々にとっての誇りにもつながるはずです。特にSNSでは、このような**「ストーリー性」**のある商品に対して、「その土地ならではの味に興味がある」「地元の食材を使ったビールを飲んで応援したい」といった好意的な反響が多く見られるため、この戦略は非常に魅力的でしょう。
⛩️弥彦村の新たな名物に!「伊弥彦米」で醸す極上エール
一方、新潟有数のパワースポットである弥彦神社の近くに醸造施設をオープンさせた弥生商店は、地元産の米を使用したビール風アルコール飲料「伊弥彦(いやひこ)エール」を製造しています。このエールには、ペースト状にした特別栽培コシヒカリ**「伊弥彦米」**を麦汁に混ぜて醸造するという、斬新な手法が用いられています。その味わいは、微炭酸でさっぱりとしており、非常に飲みやすいのが魅力だそうです。価格は300ミリリットル入りで700円と設定されています。
酒類販売を本業としていた弥生商店が、クラフトビール製造に乗り出した背景には、通信販売や郊外の大規模小売店の影響で売り上げの減少が見込まれるという経営的な判断がありました。弥彦村内でクラフトビールを製造するのは同社が初めてであり、店舗の一部を改装して醸造施設を整備し、10席の椅子を設けて、その場でできたてのフレッシュな飲料を楽しめる空間を提供しています。弥生商店の羽生雅克(はにゅうまさかつ)社長は、弥彦神社や温泉に訪れる観光客を中心に商品を展開し、「弥彦の新たな名物にしたい」と語っていらっしゃいます。
今後は、2019年夏を目途に、地元で収穫されたユズや枝豆など、季節の特産品を取り入れた新商品も市場に投入される予定です。地域に根差した特産品を使用するクラフトビールの開発は、単に商品を売るだけでなく、その土地の文化や農産物の魅力を発信する媒体となり得ます。新潟県の豊かな自然が生み出す個性を、全国、そして世界へと届けるための、この熱い挑戦に心から期待したいものです。
コメント