茨城県水戸市に拠点を置く農業生産法人「テディ」が、日本におけるパプリカ生産の常識を塗り替えようとしています。現在、テディは2.3ヘクタールという広大な敷地を持つビニール温室で、年間およそ300トン弱ものパプリカを生産する体制を確立しています。スーパーの野菜売り場でおなじみとなったパプリカですが、実は日本で本格的に消費され始めた歴史は浅く、1990年代にオランダからの輸入が始まったのがその端緒とされています。テディは、この国産パプリカの生産をいち早く手掛けた先駆者的な存在なのです。
同社の林俊秀社長は、もともと団体職員という異業種からの転身で、2000年に本格的に農業分野へ参入されました。これは、まだ大手企業がこぞってパプリカ生産へ進出するよりも前のことです。当初0.8ヘクタールだった温室は、着実に拡大を続け、現在の規模へと成長しました。私が特に注目したいのは、その栽培技術です。テディの温室には、農業先進国であるオランダ製の温室管理システムが導入されており、温度、湿度、そして植物の生育に欠かせない二酸化炭素(CO2)濃度などが緻密にコントロールされています。この緻密な環境制御こそが、品質と収穫量を両立させる鍵を握っているのでしょう。
世界基準の技術と生産性の追求
温室内部では、人の背丈を超える高さでも効率的に作業を行うため、高所作業車が稼働しています。テディの常に最大の課題は、いかに生産性を高めるかという点にあります。林社長は、パプリカ栽培で先行するオランダや韓国へ定期的に足を運び、これまでに蓄積したデータをもとに現地の農業コンサルタントから専門的なアドバイスを受けているそうです。さらに現在は、パソコンなどを活用した遠隔でのリアルタイムな情報共有を目指し、技術の導入を進めているといいます。「従業員と情報を共有し、みんなとともにレベルアップしないといけない」と語る林社長の言葉からは、単に設備に頼るだけでなく、現場の知恵や技術力を向上させようという強い意欲が感じられます。
農業の世界では、栽培面積を増やしても、かえって単位面積あたりの収穫量、つまり反収(たんしゅう)を落としてしまうケースが少なくありません。テディが収穫量の拡大に向けて努力を重ねる背景には、まさに、そういった「取りこぼし」をなくすための地道な工夫と技術力の向上が不可欠なのでしょう。同社の取り組みは、日本の農業が抱える生産効率の課題に、一つの明確な答えを提示しているように思えます。
消費者との接点強化で市場を広げる
テディが注力しているのは、生産性の向上だけではありません。消費拡大への意欲的な取り組みも同社の大きな柱です。林社長は、ピーマンのように食卓に定期的に登場する野菜と比べると「まだ知れ渡っていないところもある」と現状を分析しつつ、パプリカの潜在的な市場規模はもっと大きいと見込んでいらっしゃるようです。その中心となる活動が、自社の直売場で定期的に開催している料理講習会です。プロのシェフを招き、色鮮やかで栄養豊富なパプリカを使った多彩なレシピを紹介することで、消費者の皆様にパプリカの魅力を伝えています。
さらに、生産現場への理解を深めてもらうための見学会も曜日を決めて実施されています。この現場を見せる姿勢は、消費者への信頼感に直結するでしょう。手の込んだレシピの紹介と並行して、林社長がお薦めする非常に簡単な食べ方もあります。それは、パプリカの皮を直火でしっかりと焦がして剥くという調理法です。このひと手間で甘みが増し、格段においしくなるのだとか。「食感や味が確かめられるサイズにすると一段とおいしい」という言葉を聞くと、私も試してみたくなります。SNS上でも、パプリカを焼いて甘みを引き出す調理法は「皮を剥く手間はかかるが感動する甘さになる」「グリルで焦がす食べ方が最高」といった好意的な意見が多く見受けられ、テディの提案は消費者の関心を集めている様子が伺えます。
テディは今後も、最先端の技術を活用した生産性の向上と、魅力的な提案によるパプリカの需要喚起に精力を注ぐ計画です。国産パプリカの可能性を切り拓いた同社の、今後のさらなる発展に期待しましょう。この記事は、2019年6月5日に取材された時点での状況に基づいています。
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