2019年06月05日の東京株式市場において、投資家の間に大きな衝撃が走りました。調剤薬局業界の大手であるアインホールディングスの株価が、なんと6日連続で下落してしまったのです。一時は前日と比較して13%もの大幅ダウンとなる7120円まで売り込まれ、2018年05月以来、およそ1年1カ月ぶりの安値水準を記録しました。この急落の背景には、投資家たちの期待を裏切る決算内容があったようです。今回はこのニュースを深掘りし、業界の動向とともにお伝えしていきましょう。
売り注文が殺到した直接の引き金は、2019年06月04日に発表された2019年04月期の連結決算でした。ここで明らかになった営業利益は160億円で、前の期と比べて18%の減少となっていたのです。会社側が事前に予想していた175億円という数字を約15億円も下回る結果となり、これが「ネガティブサプライズ(悪い意味での驚き)」として受け止められました。機関投資家を中心に失望売りが膨らみ、売買代金は前日の10倍にまで跳ね上がっています。
利益を圧迫した「薬価改定」と「M&A」の誤算
では、なぜこれほどまでに利益が落ち込んでしまったのでしょうか。大きな要因の一つは、2018年04月に実施された薬価・診療報酬の引き下げです。これは国が定める薬の公定価格や医療サービスの価格が下がったことを意味し、調剤薬局の収益を直撃しました。加えて、利益率の高いジェネリック医薬品(後発薬)の販売が想定ほど伸びなかったことも、採算悪化に拍車をかけています。業界全体が逆風にさらされている状況と言えるでしょう。
もう一つの要因は、企業の合併・買収を指す「M&A」のスケジュールのずれ込みです。アインHDは事業拡大のために積極的な買収を行っていますが、新潟県のコム・メディカルや長野県の土屋薬品といった大型案件の成約が2018年の後半以降に集中してしまいました。これにより、買収した企業の利益が貢献し始める前に、仲介手数料などの先行費用だけがかさんでしまったのです。まさに「産みの苦しみ」が数字に表れた形と言えます。
市場の評価と編集部の視点
SNSやネット掲示板では、この暴落に対して「ここまで下がるとは予想外」「成長痛だと思いたいが、底が見えない」といった悲鳴に近い声が上がっています。一方で、ゴールドマン・サックス証券は目標株価を引き下げ、今後の業績見通しについても、医薬品卸との価格交渉が難航することで仕入れコストが上がることへの懸念を示しました。株価収益率(PER)を見ても25倍台と、競合の日本調剤などが13倍台であるのに比べて割高感は否めません。
私個人の見解としては、今回の急落は確かに痛手ですが、アインHDの成長シナリオ自体が崩壊したわけではないと考えています。M&Aによるコスト増はあくまで一時的なものであり、買収した薬局網が機能し始めれば、スケールメリットによる収益改善が期待できるからです。ただし、割高な株価訂正の動きはしばらく続く可能性があり、投資家としては「落ちてくるナイフ」を掴まないよう、慎重な見極めが必要な局面と言えるでしょう。
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