2019年6月6日、政府による新たな成長戦略の全容が見えてきましたが、その中心にある「地銀の再編支援」について、ネット上でも様々な議論が巻き起こっています。人口減少が加速する日本において、人手不足が経済成長の「天井」となってしまうリスクは誰もが感じているところでしょう。これを打破するために不可欠なのが、効率よく働いて成果を最大化する「労働生産性の向上」です。しかし、今回の計画が本当にその特効薬になるのか、多くの専門家やビジネスパーソンが懐疑的な視線を向けています。
SNSなどを中心とした世間の反応を見てみると、「合併しても中身が変わらなければ意味がない」「現場の負担が増えるだけではないか」といった厳しい声も少なくありません。地方銀行の統合は一つの手段ではありますが、それだけでは日本経済が抱える根本的な病巣を取り除くには不十分だという見方が広がっているのです。日本経済を活性化させるために本当に必要なのは、付加価値の高い分野へ人材や資源を大胆に移動させる「産業の新陳代謝」なのですが、今回の策はどうも踏み込み不足感が否めません。
世界に見劣りする日本の「稼ぐ力」の現状
ここで、少しショッキングなデータをご紹介しましょう。日本生産性本部が発表した国際比較によると、2017年時点での日本の労働生産性(就業1時間あたりの付加価値)は、わずか47.5ドルでした。これは主要先進7カ国(G7)の中で、残念ながら定位置となってしまった「最下位」の水準です。2010年代に入ってからというもの、米国の3分の2程度という低い水準で停滞が続いており、私たちが汗水たらして働いている割には、世界的に見て「稼ぐ力」が弱いという現実を突きつけられています。
この低迷の大きな要因の一つとして挙げられるのが、成長分野への人材移動がスムーズに進んでいないことです。ここで言う「新陳代謝」とは、競争力を失った古い企業が市場から退出し、代わりに新しいアイデアや技術を持った企業が次々と生まれるサイクルのことを指します。第2次安倍政権では「日本再興戦略」として、企業の開業率と廃業率をそれぞれ10%台にするという野心的な目標を掲げていました。経済の血液をサラサラにするように、企業の入れ替わりを活発化させようとしたのです。
目標未達が示す「雇用の流動化」という課題
しかし、現実は厳しいものでした。2017年度の開業率は5.6%にとどまり、逆に廃業率は3.5%まで低下してしまったのです。これはつまり、生産性の低い企業が市場に残り続け、新しい芽が出る余地が少なくなっていることを意味します。本来であれば、企業の存続とそこで働く人々の雇用の問題は切り離して考えるべきです。生産性が低く競争力を失った企業には市場から退出してもらい、そこで働いていた人材がより成長性の高い分野へと移ることで、社会全体の豊かさが増すはずだからです。
私自身、メディアの編集者として多くの企業を見てきましたが、既存の事業を無理に延命させることよりも、産業構造そのものを入れ替える勇気が必要だと痛感しています。今回の議論の中には、70歳までの就業機会確保という項目も含まれており、少子高齢化への対策としては一定の評価ができるでしょう。しかし、単に雇用期間を延ばすだけでは、日本全体の生産性の足を引っ張ることになりかねません。長く働くことが目的化してしまっては本末転倒なのです。
本当に向き合うべき課題は、もっと痛みを伴う部分にあります。例えば、裁量労働制の対象拡大や、解雇規制の緩和といった「本丸」の改革です。これらは労働者保護の観点から非常にデリケートでハードルが高い問題ですが、ここを避けて通っていては、日本の労働生産性が劇的に向上することはないでしょう。2019年6月6日現在、私たちは「企業の延命」と「産業の進化」のどちらを選ぶのか、重大な岐路に立たされています。

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