2019年6月5日、中国の巨大テクノロジー企業である華為技術(ファーウェイ)が、日本の民間団体が提供する規制情報リストに掲載されたことが明らかになりました。これは、日本の輸出ビジネスを手掛ける企業にとって、安全保障や危機管理の面で新たな懸念を生じさせているでしょう。リストへの掲載は5月16日付とされていますが、企業が制裁対象の団体・企業との取引を未然に防ぐための参考情報として、このリストが広く利用されていることから、日本企業の間でファーウェイとの取引に対する慎重姿勢が一段と強まる可能性が指摘されています。
このリストを提供しているのは、一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)が会員向けに提供するサービス「チェイサー」です。このサービスは、外国為替及び外国貿易法(外為法)に関連する制裁対象や、大量破壊兵器の開発に関与が疑われる企業・組織などの公開情報を集約しています。この情報には、日本国内だけでなく、米国や欧州連合(EU)、国連などの国際的な制裁リストも含まれており、輸出に関わる企業にとっては極めて重要な情報源です。CISTECの幹部は、旧通商産業省出身者を含む各業界団体や学界の関係者で構成されており、民間非営利団体ではありますが、その提供する情報の信頼性と影響力は非常に高いと言えます。
今回のファーウェイの掲載は、米国の措置が大きく影響していると見られています。米商務省は5月、安全保障上の懸念がある外国企業をリスト化した「エンティティー・リスト(EL)」にファーウェイを加え、米国製品の輸出を事実上禁じる規制措置を講じました。チェイサーには、この米国での規制措置が自動的に反映された可能性が高いと推測されます。CISTECは個別の企業に関するコメントを差し控えていますが、この動向が日本の輸出企業に与える影響は計り知れません。
もちろん、このチェイサーのリストには、民間企業の輸出を法的に規制する法的拘束力はありません。しかし、半導体や電子部品、工作機械、素材といった主要な輸出品を扱う多くの日本企業が、危機管理の参考としてこのリストを活用しています。そのため、企業が自主的に取引を縮小するなど、慎重な取引姿勢を強める可能性があるでしょう。特に、米国の輸出管理法は、外国の取引にも規制を及ぼす「域外適用」という特徴を持っています。これは、市場価格に基づき米国由来の部品やソフトウエアが原則25%超含まれる場合、日本などの海外製品であっても禁輸対象となるという厳しいルールです。
さらに懸念されるのは、輸出製品が最終的に契約とは異なる用途で使われた場合、輸出した企業側が責任を問われるリスクがあるという点です。機械業界の関係者からは「用途確認をこれまで以上に厳密に行う必要が出てくるでしょう」との声が上がっています。また、貿易実務の専門家は、「自社だけでは用途確認を完璧に行えない中小企業は、リスク回避のために取引の自粛に傾く可能性が高い」と指摘しています。この一連の動きは、日本の輸出企業に対し、安全保障貿易管理への意識と実務レベルでの対応の強化を強く促すものだと、私は考えます。世界的な規制の波を乗り切るためにも、企業はコンプライアンス(法令遵守)体制の再構築が急務となるでしょう。

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