深刻化する人手不足が、日本の生活を支えるコンビニエンスストア業界の存続を揺るがしています。その最大の要因として、現場の許容量を超えてサービスの種類を増やし続けた点が挙げられるでしょう。社会保険労務士の安紗弥香氏が指摘されているように、商品の販売とは異なり、各種サービスにはそれぞれ異なる作業手順が求められます。現在、大手チェーンの店員がこなさなければならない業務は驚くべきことに約1,200種類にも上り、この10年で3割から4割も増加しているといいます。この多岐にわたる複雑な業務が、現場の負担を極度に高めているのです。
各チェーンはマニュアルを整備していますが、店員がわずかでも作業に手間取ると、すぐに客からの苦情につながってしまうのが現状です。実際に、コンビニエンスストアへのクレームの約8割が接客に関するものだとされています。かつては挨拶とレジ打ちさえできれば誰でもできる仕事と見られていたコンビニのアルバイトは、今や「大変そうな仕事」の代名詞になってしまいました。これは、店舗スタッフが覚えなければならない業務の幅と量が、その認知度をはるかに超えてしまっていることの表れだといえるでしょう。
しかし、フランチャイズチェーン(FC)契約を結ぶすべての加盟店オーナーが人手不足に苦しんでいるわけではありません。中には、外国人材の積極的な採用などを通じて、店舗運営に余裕を持たせているオーナーも存在します。また、本業のコンビニ経営だけでは難しいと判断し、不動産業や保険業など、異業種へ参入して経営の多角化を図るオーナーも増えているようです。このように、オーナーの経営状況や意識は、いまや二極化しているのが実情でしょう。
本来、オーナーは本部と独立した「経営者」であるべきです。ところが、近年は「運営者」のような感覚で店舗を開くオーナーが増加傾向にあります。コンビニは当初、地域の酒屋など零細な商店からの転換が多かったのですが、最近では土地や建物を本部が用意し、元会社員が加盟店オーナーになるケースが一般的になっています。ある大手チェーンでは、新規オーナーの約8割が小売・卸売業の未経験者だそうです。
これは、チェーン展開のスピードを加速させる上では効率的だったかもしれません。しかし、市場が飽和し、経営者としての創意工夫やタフな判断力が求められるようになると、「脱サラオーナー」の多さが、かえってチェーン全体の弱点となって現れてしまっているのではないでしょうか。身の丈を超えた成長を続けた結果、どこをどう改善すべきか、チェーン本部自身も戸惑いを隠せないのが現実の姿です。
深夜の24時間営業、コンビニの経営判断はどうあるべきか
コンビニ業界のシンボルともいえる「24時間営業」についても、オーナー間で意見が分かれています。「夜中の営業は赤字になるため止めたい」という声がある一方で、「それほど大変だとは思わない」というオーナーもいます。これは、店舗の立地条件によって、深夜帯の集客状況や人件費の負担が千差万別であることを示しているでしょう。本部としては、原則として24時間営業を継続する方針を堅持していますが、安氏は、店舗によって提供するサービスを絞り込んだとしても、消費者はそれに適応できるだろうと提言しています。これは、お客様に「便利なサービスは何でも揃っている」という期待を抱かせたまま、現場の負担を増やし続けるのではなく、立地や時間帯に応じたサービスの最適化を図るべきだという、非常に現実的な提案だと考えられます。
この安氏の指摘は、まさに現場の悲鳴を代弁しているといえるでしょう。SNS上でも、「コンビニの店員さんはいつも忙しそうで気の毒」「無駄にサービスが増えすぎて、もはや何屋さんかわからない」といった反響が多く見受けられます。サービスを維持するための「人手不足」ではなく、「サービス過多」による人手不足に陥っているのが現在のコンビニ業界の構造的な問題です。業界全体がこの状況を打開するためには、企業側の都合によるサービスの一方的な提供を見直し、現場と消費者の双方にとって、本当に必要なサービスだけに集約する「選択と集中」の勇気ある決断が求められているのではないでしょうか。
安紗弥香氏は、上智大学を卒業後、エーエム・ピーエム・ジャパン(現ファミリーマート)での経験を経て独立された、加盟店の支援に特化した専門家です。その知見に基づいた「店頭サービスの絞り込み戦略」は、2019年6月6日時点で業界が抱える最も大きな課題に対する、重要な処方箋となるに違いありません。多様化しすぎたサービスを整理し、本来の「便利」の価値を再定義することが、今後のコンビニエンスストアが持続可能な成長を遂げるための鍵となるでしょう。
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