2020年の東京五輪・パラリンピック開催まで、いよいよ残り1年となりました。この世界最大のスポーツの祭典は、日本のスタートアップ企業にとっても自社の革新的なサービスや技術を地球規模で披露できる、千載一遇のチャンスと言えるでしょう。各社は事業の飛躍的な拡大や、大手企業との強力なパートナーシップ締結を目指し、2019年07月24日現在、着々と準備を進めています。
移動の利便性を劇的に変えようとしているのが、ニアミー(東京・中央)です。同社は今夏から、成田空港と都心のホテル間をスムーズに結ぶ新サービスを開始する予定を立てています。最大9名が乗車可能なタクシー車両を活用し、複数の利用者が宿泊する拠点を効率よく巡る仕組みを構築しました。いわゆる「相乗り」の最適化によって、利便性とコストパフォーマンスの両立を狙っています。
高原幸一郎社長は、往路と復路の両方で車両と乗客を適切に引き合わせる「マッチング」の重要性を強調しています。この仕組みが機能すれば、タクシーが空車状態で走行する無駄を徹底的に排除できるからです。SNS上では「空港からの移動が安く楽になるのは嬉しい」「効率的な輸送は環境にも優しそう」といった、スマートな移動体験に対する期待の声が次々と上がっています。
一方で、言葉の壁を打ち破ろうとする動きも活発化しています。ウォーブンテクノロジーズで顧客対応を担う小林弘佑氏は、五輪本番を見据えて東南アジア諸国の言語への対応を強化する方針を示しました。現在はウェブサイトの翻訳だけでなく、スマートフォンのアプリ内コンテンツをリアルタイムで多言語化する技術にも注力しており、訪日客がストレスなく情報を得られる環境作りを急いでいます。
さらにウォーブン・ペイは2019年の夏から、SNSの口コミなどを分析して商品紹介記事を生成し、それを多言語で配信する新規事業を立ち上げる計画です。これは、単なる直訳ではなく現地のトレンドを汲み取った「ローカライズ」に近いアプローチと言えます。日本独自の魅力が外国人の感性に響く形で発信されることで、インバウンド消費がさらに加速することは間違いないでしょう。
「コインロッカー難民」を救うシェアリングエコノミーの可能性
五輪開催期間中に懸念されているのが、テロ対策に伴う公共施設の規制強化です。特に駅構内のコインロッカーが封鎖される可能性が高まっており、大きな荷物を抱えたまま行き場を失う「コインロッカー難民」の発生が予測されています。この深刻な課題に対して、店舗の空きスペースを預かり所に変えるシェアリングサービスを展開するエクボが立ち上がりました。
エクボの工藤慎一社長は、2020年までに提携店舗を1万店にまで増やすという野心的な目標を掲げています。カフェやショップのデッドスペースを有効活用するこの手法は、まさに現代的な解決策です。ネット上では「ロッカーを探して歩き回る時間がもったいないので助かる」「店側にとっても集客のチャンスになる」と、三方良しのビジネスモデルを支持する意見が多く見受けられます。
私は、こうしたスタートアップの柔軟な発想こそが、硬直化しがちな大会運営に風穴を開ける鍵になると確信しています。いくらスタジアムが立派でも、移動や言語、荷物といった「日常の困りごと」が解決されなければ、日本への評価は高まりません。技術はあくまで手段であり、その先にいる「人」への想像力こそが、真のおもてなしを形作るのではないでしょうか。
東京五輪は、日本の現在地を世界に示し、国としての存在感を高める絶好の舞台です。しかし、万が一対応に不備があれば、一瞬にして悪印象が世界中に拡散してしまうリスクも孕んでいます。利便性を高めるスタートアップの努力を、行政や大手企業がいかにバックアップし、強固なインフラやセキュリティと融合させられるかが、今まさに問われています。
2019年07月24日という、本番を1年後に控えたこの時期の熱量は、日本の未来を占う指標になるはずです。官民が垣根を越えて手を取り合い、訪日客が「また日本に来たい」と心から思えるような、温かみのあるデジタル化を推進していく必要があります。世界を驚かせるような、新しいおもてなしの形が完成することを、心から期待して止みません。
コメント