🔥【MMTと巨大地震】南海トラフ地震の「想定外」財政リスクを現代貨幣理論で乗り越えられるか?

2019年6月6日、政府の中央防災会議が公表した南海トラフ地震による被害の最新予測は、私たちに改めて深刻な問いを投げかけています。建物の耐震化が進んだおかげで、想定される犠牲者の数は以前の試算より9万人ほど減少したものの、最悪の場合、依然として23万人もの尊い命が失われる可能性があるという、非常に重い現実が示されたのです。これは、甚大な被害をもたらした東日本大震災の犠牲者・行方不明者数の12倍以上という、想像を絶する規模の被害に他なりません。

さらに、経済的な被害も桁違いの規模です。建造物などの直接損害額は約170兆円と試算されており、東日本大震災の推計損害額よりも一桁多い額です。しかも、政府の専門家委員会は、この南海トラフ地震が30年以内に70%から80%という非常に高い確率で発生すると予測しています。さらに、同じ期間に首都直下型地震も70%の確率で発生するとされており、歴史を振り返れば、江戸時代の安政年間のように、南海トラフ地震と首都直下型地震が連続して発生した事例もあるのです。

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日本の財政が抱える「巨大地震リスク」という爆弾

このような巨大な自然災害が発生すれば、政府は災害からの復旧・復興のために、待ったなしの財政出動を迫られることになります。特に南海トラフ級の大震災となれば、企業の活動停滞などにより、一時的に税収も大きく落ち込むことが予想されます。現在、日本の政府総債務残高は国内総生産(GDP)の2.4倍に達し、これは先進国の中でも最悪の水準です。このような日本の財政は、いつ表面化してもおかしくない、巨額の潜在的財政需要という「時限爆弾」を抱えていると言えるでしょう。

そんな中、いま世界的に大きな注目を集めているのが、米国発の現代貨幣理論(MMT:Modern Monetary Theory)です。この理論は、独自の通貨を発行し、自国通貨建てで借金できる国であれば、インフレーション(インフレ:物価が継続的に上昇すること)の懸念がない限り、財政赤字や国債残高を気にすることなく、政府の財政支出を積極的に増やすことができる、と主張しています。米国では、民主党リベラル派のホープとされる女性下院議員がMMTへの支持を公言するなど、次期大統領選でも重要な論点になる気配を見せています。

MMTの提唱者の一人であるステファニー・ケルトン・ニューヨーク州立大学教授は、あるインタビューで「日本政府と日本銀行はMMTを実証してきた」とまで語っているようです。このように聞くと、国民に負担増をお願いすることに及び腰になりがちな日本の政治家の方々は、まるで魔法の杖のようにこの新理論に飛びついてしまうかもしれません。しかし、私たちはここで一度立ち止まり、深く考えるべきではないでしょうか。

MMTの「危うさ」と大災害時の対応

私の意見として、MMTの最も危険で危うい点は、インフレの兆候が見え始めたら、その時に歳出削減や増税といった財政引き締めを行えばよい、とあまりにも簡単に考えてしまうところにあると思います。インフレを抑制するための財政調整は、平時でさえ国民生活に大きな影響を与える難題です。ましてや、南海トラフ地震のような国家的な緊急事態、まさに「待ったなし」の状況下で、政府が迅速かつ適切に歳出削減や増税といった財政引き締め策を実行できるでしょうか。

この点に関して、私はMMTを主張される方々に、明確な回答を求めたい2つの重要な質問があります。一つ目は、日本が南海トラフ地震のような巨額の潜在的財政需要を抱えている事情を知っても、なおMMTを勧めることができるのか、という点です。二つ目は、もし財政赤字の増加を許容するMMT的な政策を進めた状態で、巨大な南海トラフ地震に遭遇した場合でも、それが財政破綻の引き金になることは絶対にないと断言できるのか、という点です。

2011年3月11日の東日本大震災の発生時には、「想定外」という言葉が飛び交い、私たちを混乱させました。私は、日本の未来を担う編集者として、そして一人の国民として、このような無責任な弁解を、再び日本の政府や関係者から耳にすることはあってはならないと考えています。巨大地震という避けがたいリスクに備え、私たちは財政のあり方についても「想定外」を許さない、真摯な議論を深めていく必要があるのです。

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