2019年07月24日、コミュニケーションアプリ大手のLINEが発表した2019年1月から6月期における連結決算は、世間に大きな衝撃を与えました。前年の同時期には29億円の黒字を計上していましたが、今回は一転して266億円もの最終赤字に転落したのです。この急激な数字の変化は、決して経営の基盤が揺らいでいるわけではなく、未来に向けた非常に野心的な攻めの姿勢が反映された結果といえるでしょう。
大きな損失の要因となったのは、スマートフォン決済サービス「LINE Pay」における大規模な還元施策です。特に2019年05月に実施された、ユーザー同士で1000円相当を送り合える「祝!令和 全員にあげちゃう300億円祭」というキャンペーンは記憶に新しいところではないでしょうか。こうした「先行投資」と呼ばれる戦略的な出費により、営業損益も218億円の赤字を記録しましたが、その裏で確かな果実も手にしています。
SNS上では、この赤字額に対して驚きの声が上がる一方で、「実際に300万人も新規ユーザーが増えているなら成功ではないか」という前向きな意見も散見されます。現金を使わずにスマホで支払いを行う「キャッシュレス決済」の覇権を握るため、今は利益を削ってでも顧客を囲い込むフェーズにあります。広告の露出度を高めることでブランドを浸透させる手法は、現代のIT企業が成長するうえで避けては通れない道なのです。
現在のLINE Payは、月間の利用者数が490万人に到達し、利用できる加盟店も171万カ所まで拡大しました。街中の至る所で緑色のロゴを見かけるようになったのは、この先行投資が実を結んでいる証拠でしょう。広告事業に目を向けても、売上収益は前年比11%増の1107億円と堅調です。特に画面に表示される「ディスプレイ広告」や、企業が販促に使う「公式アカウント」の需要は非常に高く、収益の柱として機能しています。
次世代広告「スマートチャネル」が握る黒字化への鍵
2019年の下半期に向けて、同社はさらなる収益向上を狙った新サービス「スマートチャネル」を本格始動させます。これは、トーク画面の最上部という一等地を活用し、ユーザー一人ひとりの興味関心に合わせたニュースや動画広告を配信する画期的な仕組みです。国内の若年層、特に15歳から29歳の約9割が毎日利用するという圧倒的な接触率を背景に、企業に対して強力なアプローチが可能になるでしょう。
決算説明会の席で出沢剛社長は、戦略事業への投資は第2四半期がピークになるとの見解を示しました。この発言からは、巨額の赤字を一時的な必要経費と捉え、ここからは回収のフェーズへと移行する自信が読み取れます。個人的な見解としては、インフラとしての地位を確立した後のLINEが、決済データをどう活用して私たちの生活を便利にしてくれるのか、その「便利さの質」こそが真の勝負どころだと感じています。
通期の業績予想は依然として非公表ですが、投資の勢いが収まる下期以降、広告事業の増益分がどこまで決済事業のコストを補填できるかが今後の焦点です。莫大な赤字は、次世代のスタンダードを創り出すための挑戦の証といえるでしょう。決済手段としての利便性が向上し、日常のあらゆる場面でLINEが欠かせない存在へと進化していく過程を、私たちは今まさに目の当たりにしているのかもしれません。
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