東日本大震災の教訓を踏まえ、災害に強いまちづくりを目指す宮城県仙台市は、国立大学法人東北大学、そして株式会社NTTドコモという異色の三者がタッグを組み、指定避難所に設置されている蓄電池(バッテリー)をより効果的に活用するための共同実験に乗り出しました。この取り組みは、災害時に市民の命を守る避難所の電力供給体制を強化し、地域防災力を大幅に高めることを目的としています。2019年5月30日(木曜日)に共同実験協定が締結され、その期待の高さから、SNS上でも「避難所の安心感が増す」「メーカーが違う蓄電池を一括管理できるのは画期的」といった、防災意識の高いユーザーからのポジティブな反響が多く見られました。この試みは、2021年3月末までの期間をかけて実施される予定です。
仙台市では、震災の経験から、市内の小中学校など196カ所の指定避難所すべてに、太陽光発電設備とセットで蓄電池を設置しています。平常時は太陽光で発電した電力を施設で利用し、災害時には蓄電池の電力を非常用電源として使う仕組みです。しかし、これまでの運用では、太陽光で発電した電力を使いきれずに余剰電力が生じてしまったり、いざという時のために満充電の状態を長く維持することで蓄電池自体の劣化が進んでしまうといった課題に直面していました。そこで、市と東北大学は、一部の施設を対象に、エネルギー管理システムによる最適制御を導入する実証実験を進めてきたという経緯があるのです。
この最適制御とは、簡単に言えば、電力の使用状況や天候予測に基づいて、蓄電池への充電や放電を最も効率が良い形に調整することを指します。例えば、翌日の天気が晴天で太陽光発電が多く見込める場合、蓄電池の電力を前日にあらかじめ一定量使い切ってから充電に備えるなど、柔軟な運用が可能になります。これにより、太陽光で発電した電力を最大限に活用し、さらに蓄電池の寿命を延ばす効果も期待できるでしょう。この技術は、普段使いでの電力コストの削減にも繋がり、環境負荷の低減という現代的なテーマにも貢献する素晴らしい試みであると言えます。
異なるメーカーの壁を打ち破るドコモの技術力
従来の取り組みで大きな壁となっていたのが、蓄電池のメーカーや通信方式が異なると、システムが一括で制御できないという問題でした。196カ所もの施設に設置された蓄電池には様々な種類があり、これらすべてをまとめて管理し、効率的に運用することが難しかったのです。この難題に、移動体通信事業で培った技術で挑むのがNTTドコモです。ドコモは、太陽光発電と蓄電池を組み合わせて運用する「グリーン基地局」で培ってきた、高度な管理・制御技術を提供します。これにより、メーカーの違いに左右されることなく、市内の指定避難所の蓄電池を一元的に管理し、全体の災害対応力を飛躍的に高めることが可能となるでしょう。
さらに、この共同実験では、蓄電池の残量をより分かりやすく「見える化」することにも重点が置かれています。現在、蓄電池の残量は「10キロワットアワー(kWh)」などの専門的な単位で表示されることが多く、一般の市民にとって、あとどれくらいの時間、照明や暖房、テレビなどが使えるのかを直感的に把握するのは困難です。キロワットアワー(kWh)とは、消費電力が1kWの機器を1時間使ったときの電気の量を示す単位ですが、これだけでは避難所で活動する上で必要な情報として十分ではありません。そこで、共同実験では、この残量表示を「照明ならあと何時間使える」「携帯電話の充電ならあと何回できる」といった、避難所の運営者が現場で役立てやすい具体的な数値に置き換えることを目指しています。
これは、私が編集者として特に注目したいポイントです。技術的な進歩もさることながら、それを「誰にでも分かりやすい形」に変換するこの視点こそが、真に防災に貢献する鍵となります。どんなに高性能なシステムでも、使う側の人間が直感的に判断・行動できなければ、有事の際には宝の持ち腐れになってしまいます。ドコモの技術と、仙台市・東北大学の知見が結びつき、蓄電池という防災インフラが、市民の視点に立って最適化されることによって、日本の地域防災の新たなモデルケースが生まれるに違いないでしょう。この画期的な取り組みが、全国の自治体へと広がることを強く期待しています。
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