韓国のエネルギー大手、SKイノベーションが、リチウムイオン電池の主要構成部品であるセパレーター(絶縁膜)の生産能力を、2025年までに現在の5倍にまで大幅に引き上げるという、驚くべき拡大戦略を打ち出しました。これは、電気自動車(EV)市場の急成長を背景に、同社が電池事業を次の成長の柱と位置づけ、世界的な主要サプライヤーとして飛躍を遂げようとする強い意志の表れと言えるでしょう。
2019年5月27日にソウルで記者会見を開いた金俊(キム・ジュン)社長は、「大幅な増産で世界首位を目指す」と力強く抱負を語り、2025年には自社の世界シェアを現在の1割強から3割にまで高めるという、非常に野心的な目標を掲げました。この壮大な計画を実現するために、同社は1兆ウォン(約930億円)を超える巨額の投資を見込んでいます。この投資が、世界の電池材料市場に大きなインパクトを与えることは間違いありません。
🔋世界のEV・電池市場を見据えた生産体制の構築
SKイノベーションの計画では、セパレーターの生産拠点を、現状の韓国のみから中国とポーランドにも拡大し、年間生産能力を現在の5億平方メートルから25億平方メートルへと一気に引き上げる構えです。具体的には、中国の工場が2020年、ポーランドの工場が2021年に稼働を始める予定で、すでに建設が進められているとのこと。これにより、欧州とアジアという成長著しいEV市場の需要を的確に捉え、供給体制を強化することになります。
ここで言うセパレーター(絶縁膜)とは、リチウムイオン電池のプラス極とマイナス極を物理的に隔て、電気的なショートを防ぐために欠かせない樹脂製の薄膜です。万が一ショートすれば、電池が異常発熱し、最悪の場合は発火につながるため、高温に耐え、長期間の安定した使用が求められる、非常に重要な安全機能部品です。EVやスマートフォン、タブレットの普及に伴い、このセパレーターの世界的な需要は急増しており、現在は旭化成が世界シェア約2割で首位を占めています。
SKイノベーションは、自社製リチウムイオン電池への搭載はもちろん、LG化学といった外部の電池メーカーにもセパレーターを供給する見込みです。また、同社はセパレーター技術をベースに、数年前にリチウムイオン電池市場へ本格参入を果たしており、セパレーターの増産は、電池本体事業を成長させるための重要な一手とも言えます。現在、同社のリチウムイオン電池の世界出荷シェアは1%強(テクノ・システム・リサーチ調べ、2017年)とまだ低い水準にありますが、この強力な部材供給体制が、電池事業の成長を後押しすることは確実でしょう。
💡リスクを伴う急速な拡大戦略と市場の評価
SKイノベーションの電池事業への力の入れようは、セパレーターだけでなく、電池本体の生産計画からも明らかです。2020年~2022年にかけて、中国、ハンガリー、米国で新工場を順次稼働させ、既存の韓国工場と合わせた4カ国生産体制を整備する計画が進んでいます。これにより、同社の年間生産能力は現在の5倍以上となる年間計30ギガワット時に達し、さらに年60ギガワット時への引き上げも検討されているとのことで、その積極性には目を見張るものがあります。
特に、2018年11月にドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)と電池の供給契約を結んだことは、SKイノベーションの存在感を一気に高めるきっかけとなりました。テクノ・システム・リサーチも、この4極生産体制が整う2022年が、同社にとっての**「勝負」の年になると指摘しています。市場は、後発でありながら巨額の投資と戦略的な提携で急速に存在感を増すSKイノベーションに注目が集まっています。
しかし、このような「前のめりの姿勢」には、当然ながらリスクも伴います。電池の生産に不可欠なコバルトなどのレアアースの安定調達は常に大きな課題です。また、EVの普及がSKイノベーションの想定通りに進まなかった場合、電池の供給が減少し、米国に建設中の工場だけで16億ドル(約1800億円)以上とされる多額の投資を回収できなくなる恐れもあります。今後のEV市場の成長速度を正確に見極める「目利き」が、電池事業を軌道に乗せるための鍵となるでしょう。
私見ですが、SKイノベーションのこの大胆な戦略は、EVシフトの波に乗り遅れまいとする強い危機感と、セパレーターという基盤技術への自信の現れだと思います。既存の主要メーカーである旭化成や東レ**、そして力をつける中国企業との間で、セパレーターの世界シェアを巡る競争は激化するでしょう。この巨額投資とグローバルな生産体制の構築が、同社を世界の電池サプライヤーのトップランナーへと押し上げるのか、今後の動向に目が離せません。
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