AIと化学の融合が切り拓く新時代!NECの創薬参入から読み解く「2019年材料革命」の最前線

2019年に入り、日本の産業界に激震が走っています。IT大手のNECが、同年6月に開催された株主総会において定款を変更し、事業目的に「医薬品」を追加したのです。これは、かつてのハードウェアメーカーという枠組みを超え、人工知能(AI)を武器にバイオテクノロジーの深淵へ踏み込むという、極めて野心的な意思表示に他なりません。SNS上でも「ついにIT企業が薬を作る時代が来た」と、大きな驚きと期待を持って受け止められています。

同社はフランスのバイオ企業とタッグを組み、AIを駆使してがん治療薬の開発・製造に乗り出します。ここで鍵となるのが、がん細胞の表面に現れる「ネオアンチゲン」と呼ばれる異常なタンパク質の解析です。AIが膨大なデータからこの標的を特定し、患者自身の免疫力を高める薬をデザインします。こうした「化学×数学」の異業種連携は、中外製薬とプリファード・ネットワークスの提携にも見られるように、今や創薬の新しいスタンダードへと進化しつつあるのです。

1928年にアレクサンダー・フレミングがペニシリンを発見してから、2019年で91年が経過しました。人類が自然界の偶然に頼っていた発見のプロセスは、今やデジタル技術による必然へと変貌を遂げようとしています。AIが照らし出す領域は、単なる医薬品の分野に留まりません。新しい素材や材料を生み出す「マテリアルズ・インフォマティクス」という手法が、製造業全体の勢力図を根底から書き換えようとしている点に注目すべきでしょう。

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加速するグローバル競争と日本の危機感

この変化を象徴するのが、中国企業の圧倒的なスピード感です。例えば、車載電池大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は、創業からわずか8年という驚異的な短期間でリチウムイオン電池のトップメーカーへ登り詰めました。多くの専門家は、彼らが高度なアルゴリズム解析やシミュレーション技術を駆使して、材料開発のプロセスを劇的に短縮したと分析しています。中国政府が国を挙げてこの「材料革命」を後押ししている現状は、日本にとって無視できない脅威です。

実際に、日本企業もこの荒波を肌で感じ取っています。かつては日本の独壇場とされていた、紙おむつに使用される高吸水性樹脂(SAP)の分野では、大手である日本触媒と三洋化成工業が経営統合を発表しました。この決断の背景には、中国勢の猛追に対する強い警戒感があったとされています。どれほど現在の市場シェアが高くとも、デジタル技術による新材料の登場が、一瞬にして既存の技術を陳腐化させてしまうリスクを孕んでいるのです。

私は、この「AI×化学」の潮流こそが、日本の製造業が再び世界で輝くためのラストチャンスだと確信しています。GAFAのような巨大IT企業が材料探索の分野に本格参入してくる前に、私たちが持つ職人技的な知見とAIをいかに融合させるかが勝負を分けるでしょう。未知の領域に対する恐怖を捨て、自ら産業地図を塗り替える気概が必要です。かつてのペニシリンに匹敵する歴史的発明が、2019年以降の日本から生まれることを切に願って止みません。

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