東京都知事である小池百合子氏は、来る2020年夏の都知事選挙での再選を見据え、2030年までの政策目標を盛り込んだ新たな長期計画の策定を本格的にスタートさせました。これは、2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会後の都政運営の指針となる、いわば知事の事実上の「2期目公約」に位置づけられる重要な取り組みです。2019年4月中旬に開催された第1回計画策定会議において、小池知事は集まった幹部職員に対し、「キーワードは2つ。成長と成熟である」と明言し、東京の未来像を描く強い意欲を示されています。
この新長期計画では、有識者などの意見も参考にしながら、まず2040年代の東京の姿を議論し、そこから逆算して2030年に向けた具体的な施策を詰めていくという手法が採られています。2019年8月をめどに、まずは議論の論点をまとめる予定です。知事は計画策定への強いコミットメントを示すため、5月下旬には元副知事の村山寛司氏を政策担当の特別秘書として起用し、都庁の各部署を横断する形で政策調整を任せるという異例の体制を敷きました。
なぜこの計画が東京の転換点を示すことになるかといえば、それは東京都の人口動態が大きく変化する見通しにあるからです。この計画期間中の2025年をピークに、都の人口は減少に転じると予測されています。さらに、高齢者人口は2030年までに2015年比で約30万人増加し、その高齢者世帯の44パーセントが一人暮らしとなる見込みです。こうした状況下で、いかに都民の皆様の安心を確保していくか、これが新計画の最大の重要課題となります。
また、都は、情報社会(Society 4.0)に次ぐ新たな社会の形とされる「Society 5.0(ソサイエティ5.0)」の実現に向けた検討会も立ち上げています。Society 5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、人工知能(AI)やビッグデータなどの最新技術を活用することで、経済発展と社会的課題の解決を両立させる人間中心の社会を指します。都のある幹部は、「高齢化が進む中でも、これらの技術を活用して経済成長を目指すという知事の強い意欲がうかがえる」と語っており、知事の目指す「成長」の核心はここにあります。
東京はこれまで、日本経済を牽引する巨大都市というイメージが根強くありますが、実態は少し異なります。2015年度の県民経済計算を見てみると、都内総生産の増加率は前年度比2.0パーセントと、全国合計の3.1パーセントを下回る結果でした。さらに、一人当たり県民所得の増加率も全国で6番目に低い水準です。人口増加による相応の活力はあるものの、都の抱える労働生産性の低さこそが、東京の真の姿なのです。これまでの歴代知事が策定した長期計画と同様、この新計画も時代の変化を映し、都政の新たな方向性を決定づけるでしょう。
特に今回の計画では、過去の計画には見られなかった項目が策定方針に盛り込まれています。それは、「全国との共存共栄に向けた取り組み」です。これは、2018年に顕在化した地方法人課税の偏在是正問題、つまり東京に一極集中する税収に対する「東京包囲網」とも言える状況に対し、風穴を開ける狙いがあると考えられます。都は2019年5月下旬に水道事業での連携を宮城県と合意したことを皮切りに、今後も全国の各県と協力できる分野を探り、計画に反映させていく方針です。
この動きはSNS上でも大きな反響を呼んでいます。「東京一極集中を是正するきっかけになる」「地方自治体との協力は理にかなっている」といった肯定的な意見がある一方で、「まずは都内の課題解決に注力すべきではないか」「税収が減る中でどこまで協調できるのか」といった懸念の声も見受けられます。私の意見としては、この「成長と成熟」を両立させ、さらに「全国との共存共栄」を視野に入れた新たな長期計画は、人口減少と高齢化が進行する日本全体のモデルケースになり得るでしょう。小池知事の描く東京の未来図が、これからの都政をどのように変えていくのか、その展開に期待せずにはいられません。
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