2019年6月7日、日本経済新聞社が実施したスマートフォン決済サービスに関する調査結果が、現在の市場が激しい競争の渦中にあることを明確に示しています。スマホを実際の財布のように活用するシーンとして、最も多くの回答を集めたのが「コンビニエンスストア」で、全体の18%を占める結果となりました。この数字は、2位の「スーパー」(8%)を大きく引き離しており、消費者が日常的に少額の決済を行う場として、コンビニがスマホ決済サービスの主戦場となっている状況が浮き彫りになったと言えるでしょう。
この調査から、消費者がサービスを選ぶ際の基準が「お得さ」だけでなく、「どこで使えるか」という利便性に強く傾いていることが見て取れます。いくらポイント還元などの魅力的な特典があったとしても、日常的に利用するコンビニで使えなければ、ユーザーからの評価は著しく低下する傾向があるのです。そのため、各決済サービス提供会社は、激しい還元キャンペーンを展開する一方で、加盟店、つまり実際にサービスを利用できる店舗の獲得にも並々ならぬ力を注いでいる様子がうかがえます。しかし、利用者側が求める「どこでも使える使い勝手」というニーズには、現状まだ完全に応えきれていない実態があると言えるのではないでしょうか。
例えば、調査期間終了直後の2019年3月末から、普及度満足度では4位だった「PayPay(ペイペイ)」がローソンでの対応を開始し、さらに同年7月からはセブンイレブンでも利用可能となるなど、新興サービスによる加盟店拡大の動きは非常に活発です。これは、コンビニでの対応が、サービスの利用頻度とユーザー評価を大きく左右すると認識している証拠にほかなりません。こうした動きを裏付けるかのように、SNS上では「PayPayがセブンイレブンで使えるようになるのは神対応」「これでTポイントカードを持ち歩かなくて済む」といった、利便性向上への期待や歓迎のコメントが多く見受けられました。
乱戦の要因!QRコード決済と非接触決済の「一長一短」
スマホ決済サービスは大きく分けて、店頭のQRコード(キューアールコード:スマホのカメラで読み取る二次元バーコード)を読み取って決済を行う「QR型」と、Suica(スイカ)のように端末にかざすだけで完了する「タッチ型(非接触型)」に分かれます。今回の調査では、PayPayやLINE Pay(ラインペイ)といったQR型が、ユーザーサポートや機能性に関する専門家調査で高い評価を得ました。しかし、タッチ型に比べて「使い勝手」や「普及度」で劣る面を補うため、QR型はより多くの還元額を提供し、「お得さ」を武器に顧客を自社サービスへ囲い込もうとする戦略が鮮明になっています。
一方で、PayPayのような新興勢力ならではの課題も明らかになりました。スマホ決済を使おうとしたものの、何らかの理由で使えなかったケースを尋ねたところ、「店員が使い方について分からなかった」と回答した割合は、モバイルSuica(モバイルスイカ)の7.3%に対し、PayPayは14.9%と、約2倍の開きがあったのです。これは、新しいサービスが急速に普及する中で、現場の店員教育やオペレーションの浸透が追いついていないという、残念ながら避けられない側面を示していると言えるでしょう。SNSでも「レジで手間取って後ろに並んでいる人に迷惑をかけた」「店員さんに使い方を聞かれて、逆に教える羽目になった」など、現場での混乱を伝える声が散見されました。
現在、全ての決済サービスに対応している店舗は非常に少なく、利用者は店ごとにどのアプリが使えるのかを確認し、複数のサービスを使い分ける必要があります。アプリをいくつもスマートフォンにダウンロードしなければならない手間もかかりますし、決済の度に「今日はどのアプリを使おうか」と悩むのは、本来「現金を使わない便利なサービス」であるはずのキャッシュレスの煩雑さを増しているように感じられます。今回の調査結果では、どのサービスも一長一短があり、他社を圧倒する突出した評価を得た会社は存在しませんでした。
「還元キャンペーン」頼みからの脱却が急務
さらに、2019年3月以降もみずほフィナンシャルグループなどによる「J-Coin Pay(ジェイ・コイン・ペイ)」や、ゆうちょ銀行の「ゆうちょPay(ゆうちょペイ)」などの新しいサービスが続々と参入しており、市場の乱戦模様は激しさを増しています。このような状況は、利用者にとっては還元キャンペーンなどで「お得」になる機会が増えるというメリットはありますが、一方で「結局どれを使えば一番便利でお得なのかが分かりにくい」という、混乱にもつながっています。
各社が現在力を入れている「還元額キャンペーン」は、一時的に顧客を自社サービスに引きつける、つまり「囲い込む」ためには極めて有効な手段でしょう。しかし、当然ながらこのような大規模な還元策は永続的に続けることはできません。サービス提供会社は、還元キャンペーンという「麻薬」のような手段に依存するのではなく、利用者の真の満足度を高める取り組み、具体的には「どこでも使える利便性」や「誰でも迷わず使える操作性」、そして「現場でのスムーズな決済体験」といった、サービスの根幹に関わる部分の改善に注力する必要があるのではないでしょうか。真のキャッシュレス社会の実現には、企業間の熾烈な争いを超えた、利用者本位の使いやすさが不可欠であると、編集者として強く主張したいと考えています。
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