🔥ブレグジット大混乱の震源地! 2019年欧州議会選で見えた英保守党の構造的危機と次期首相の運命

2019年6月7日公開の本稿では、同年5月に行われた欧州議会選挙の結果から、イギリス(英国)政治の混迷、特に与党・保守党が抱える根深い構造的な課題について、日本大学の渡邉容一郎教授が鋭く分析していらっしゃいます。40年前の1979年、英国史上初の女性首相としてサッチャー氏が誕生し、同年に欧州議会史上初の直接選挙が実施されました。それから40年後の2019年5月、EU(欧州連合)離脱(ブレグジット)を決断したはずの英国は、サッチャー氏以来2人目の女性首相であるメイ氏(保守党)の下、再び欧州議会選に参加するという屈辱的な状況に追い込まれてしまったのです。

この選挙参加の背景には、ブレグジットの具体的な進め方を巡る保守党内の激しい分裂と混迷が存在します。そして、選挙結果は予想通り、長きにわたり英国政治を担ってきた保守党と最大野党・労働党の二大政党が歴史的な大敗を喫し、代わりにEU離脱・残留の立場を明確に打ち出した小政党が大きく躍進しました。これは、二大政党の対応に対する有権者の強い怒りと不満の表れに他ならないでしょう。

この結果を理解するためには、同年5月2日に実施された統一地方選挙(準国政選挙に位置づけられる)を振り返る必要があります。統一地方選は、住民の投票を通じて自治体政府を選ぶのが本来の役割ですが、今回はブレグジットそのものや、与野党の対応に対する国政への審判の場となりました。結果、混迷の元凶である保守党は議席を大幅に減らし、報道ではメージャー政権時代に匹敵する歴史的な惨敗と報じられています。最大野党の労働党もまた、ブレグジットを巡るコービン党首の曖昧な姿勢への不満からか、全体で議席を失う結果となりました。

一方で、統一地方選で躍進したのは、国民投票の再実施を訴える親EU派の自由民主党や緑の党です。これは「EU残留派の勢い」というよりも、保守・労働両党に対する有権者の「怒り」が勝った結果だと捉えるのが自然でしょう。統一地方選と同様、欧州議会選も二大政党への抗議投票としての役割を果たす傾向があります。特に与党である保守党に厳しい審判が下ったのは、党内をまとめることすらできず、ブレグジットを埋没させてしまったことへの当然の帰結であると考えられます。

欧州議会選では、二大政党を抑えて2つの小党が大きく支持を伸ばしました。EUからの完全離脱を掲げるブレグジット党が、得票率・獲得議席数ともに第1位を獲得しました。この党を率いるのは、2016年の国民投票で離脱派の顔だったファラージ党首です。彼は、EU離脱を実現できないメイ保守党政権への反発に加え、二大政党の機能不全を強く訴えたことで、再び有権者の人気を集めることに成功しました。一方、EU残留派の自由民主党も二大政党を抑えて第2位に浮上し、有権者の不満の受け皿となったことが明確に示されました。

英国の欧州議会選は、国政選挙である総選挙とは異なり比例代表制をベースに当選者が決まるため、政権選択とは別次元の民意がストレートに反映される形となりました。この結果を受け、辞意を表明したメイ首相の後継党首を選ぶ保守党の党首選挙(事実上の次期首相選び)の行方に、今後は熱い注目が集まることでしょう。ブレグジット党の躍進は、ジョンソン前外相や強硬離脱派のグループ「ERG」などの勢いを強めることは避けられない情勢です。

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保守党が分裂と混迷を続ける構造的な理由

メイ首相のリーダーシップの是非はさておき、なぜ保守党はEUとの関係やブレグジットの進め方を巡って、これほどまでに分裂と混迷を続けてしまうのでしょうか。渡邉教授は、その原因を保守党とその保守主義に内在する「構造的特質」による部分が大きいと分析されています。英国の保守主義とは、保守党に属する政治家の政策や言動、そしてそれを支える世界観・理念などの総体を指す、政治集団と切り離せない政治原理であると言えるでしょう。

かつての伝統的な保守党は、特定のドグマ(教条)的なイデオロギーには固執せず、党首や党への忠誠と団結を武器に、政権獲得と維持を最優先する統治の政党というイメージが強固でした。しかし、今やその伝統は失われ、党内でのイデオロギー論争に伴う分裂は、1990年代のメージャー政権期から表面化しているとの見解もあります。しかし、保守党には元来、以下の3つの理由から、イデオロギー論争と対立・分裂を招きやすい構造的特質が備わっていたと指摘されています。

第一の理由は、英保守主義(者)の基本的な性格である多面性と包括性です。共通の目標として「何かを保守する」ことがあっても、それを達成するための多様な手段や方法を巡って、党内で意見の対立や不和が生じやすいのです。メイ保守党がブレグジットの手続きに関してなかなか合意形成できなかった理由の一つも、この点に求められます。ゆえに、総選挙での連続勝利や、党首と党への忠誠・団結が、ことさら重要視されてきた歴史があるのでしょう。

第二の理由は、党首権限の相対的な強さです。英国の国政選挙制度である小選挙区制の影響もあり、保守党は党政策の決定や閣僚人事の面で、党首に比較的大きな権限を与えています。党首は「党の顔」以上の存在感と影響力を持つため、「選挙に勝てない党首」や「公約を実行できないリーダー」に対して、党所属の議員(フォロワー)も厳しくなりがちです。

第三の理由は、1965年に導入・定着した党首選挙制度、すなわち党内民主主義の負の効果です。現在では党下院議員に加え、党員も党首を選べる仕組みとなっています。その結果、党内でのイデオロギー論争に基づく議員同士の対立が党首の方針や党のあり方に影響を及ぼしやすくなり、争点次第では党内分裂が常態化してしまいました。

興味深いことに、サッチャー氏はこれらの構造的特質を「武器」として活用しましたが、メイ氏がその術を知らなかったという対照的な側面も見られます。両者の決定的な違いは、人々の不満を見抜いてそれに耳を傾けようとしたか否かにあるかもしれません。しかし、皮肉にも両者とも、欧州統合を巡る党内抗争の犠牲となり、退陣を余儀なくされてしまいました。

SNSでも、「ブレグジットの迷走は保守党の体質そのもの」「二大政党への怒りが可視化された選挙結果」といった厳しい意見が多く見受けられました。#ブレグジット、#欧州議会選、#イギリス政治などのハッシュタグとともに、保守党内の混乱を懸念する声が多数投稿されています。メイ首相が強硬離脱派に配慮しつつ、なかなか成果を上げられなかった背景には、このような構造的な党内事情が存在していたのです。次期保守党党首・首相が誰になろうとも、党内の分裂と混迷という「いばらの道」は当分続き、英国政治の安定は遠い未来となるだろうと、渡邉教授は警鐘を鳴らしておられます。この分析は、今後の英国の舵取りを考える上で非常に重要な視点を提供していると言えるでしょう。

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