日本が世界に誇る家電メーカー、パナソニックが大きな転換点を迎えています。同社が2019年07月31日に発表した2019年04月から06月期の連結決算は、営業利益が前年同期比で43.6%も減少する563億円という厳しい結果となりました。特に、長年グループの収益を支えてきた「屋台骨」である家電事業の失速は隠せません。かつては安定して現金を稼ぎ出す「キャッシュカウ(収益源)」と見なされてきましたが、原材料費の高騰や海外メーカーとの熾烈な価格競争により、その立ち位置は今、劇的な変化を迫られているのです。
この危機的状況を打破すべく、2019年04月に家電部門を統括するアプライアンス社のトップに就任したのが品田正弘常務執行役員です。品田氏は就任早々「100日プラン」というスローガンを掲げ、国内外の生産拠点を精力的に巡りながら現場社員との対話を重ねてきました。SNS上でも「パナの家電が変わるかもしれない」といった期待の声が上がる一方で、「中韓メーカーの勢いに勝てるのか」というシビアな意見も散見されます。まさに、100年の歴史を持つ巨人が再び輝きを取り戻せるかどうかの正念場を迎えていると言えるでしょう。
テレビ事業の苦境と「選択と集中」の断行
かつての家電の主役、テレビ事業は特に厳しい波にさらされています。2020年の東京五輪・パラリンピックを控えて需要の拡大が期待される一方で、世界シェアでは韓国のサムスン電子やLG電子に大きく差をつけられているのが現状です。さらに、国内市場でも中国のハイセンスといったメーカーが急速に追い上げており、価格競争は激化の一途を辿っています。65インチの大型テレビの平均単価が1年で15%も下落するという異常事態の中で、これまでの薄利多売なビジネスモデルは限界を迎えていることが、誰の目にも明らかになっています。
こうした状況を受け、パナソニックは「聖域なき改革」として、生産体制の再構築に乗り出しました。2019年内にはメキシコのテレビ工場を閉鎖することを決定するなど、不採算部門へのメス入れを躊躇なく進めています。ここで言う「選択と集中」とは、すべての製品で勝負するのではなく、強みのある分野に資源を投入する戦略です。例えば、日本国内で圧倒的なシェアを誇るドライヤーなどの美容家電や、成長著しいインド市場に特化した製品開発など、勝てる領域を見極めて注力する姿勢を鮮明に打ち出しています。
「くらしアップデート」が描く家電の未来像
パナソニックが次なる成長の柱として掲げるのが「くらしアップデート」というコンセプトです。これは、単に家電を売って終わりにするのではなく、スマートフォンのようにソフトウェアを更新することで、購入後も製品の価値を高め続ける仕組みを指します。冷蔵庫にある食材から最適なレシピを提案したり、家中の照明や家電を一括管理したりといった、生活そのものを進化させる体験の提供を目指しています。これこそが、ハードウェアのスペック競争に陥っている海外メーカーとの差別化を図るための、同社独自の切り札となるはずです。
私は、この改革の成否は「スピード感」にかかっていると考えます。品田氏が社員に発した「100日でできない変革は1000日あってもできない」という言葉は、IT化が加速する現代において非常に本質を突いたものです。かつての成功体験に縛られず、伝統ある家電メーカーから「ライフスタイルを提案するサービス企業」へと脱皮できるか。2019年、パナソニックが進めるこの大勝負は、日本の製造業全体の進むべき道を示す試金石となるに違いありません。現場の熱量と経営の決断が噛み合ったとき、真の復活が見えてくるでしょう。
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