医療現場の最前線を支える「画像診断機器」の世界市場が、今まさに熱い盛り上がりを見せています。2018年における同市場の売上高は、416億9,900万ドル(約4兆4,918億円)に達し、前年比で5%もの成長を記録しました。1台で数億円という巨額の投資が必要なコンピューター断層撮影装置(CT)などは、買い替えサイクルが非常に長いことが特徴ですが、それでも着実な伸びを見せているのは、世界的な医療の高度化が進んでいる証と言えるでしょう。
現在の市場を牽引しているのは、依然として「ビッグスリー」と呼ばれる欧米の巨大メーカー3社です。首位の独シーメンスヘルスケアを筆頭に、米ゼネラル・エレクトリック(GE)、オランダのフィリップスが、全体の約65%という圧倒的なシェアを占めています。しかし、この強固な牙城に風穴を開けようとしているのが、日本企業の存在です。なんと上位10社の中に、日本勢が5社もランクインするという快挙を成し遂げているのです。
2018年のデータでは、昨年11位だった島津製作所が10位に浮上したことで、日本勢の層の厚さがより明確になりました。SNS上でも「精密機械における日本の技術力は健在だ」「医療分野での日本の貢献度はもっと知られるべき」といった驚きや賞賛の声が上がっています。欧米勢が他分野で圧倒的な強さを誇る医療機器業界において、画像診断の領域は日本メーカーが互角以上に渡り合える、極めて稀有で希望に満ちた市場なのです。
国内メーカーの戦略的買収と独自の強み
なぜ、これほどまでに日本勢が強いのでしょうか。その背景には、世界一と言われる日本国内のCTや磁気共鳴画像装置(MRI)の設置台数があります。豊富な国内需要がメーカーの技術を磨き、経営を下支えしているのです。特に4位のキヤノンは、2016年3月に東芝から医療機器事業を約6,655億円で買収し、本格的な参入を果たしました。かつて眼底カメラなどで培った光学技術と東芝の基盤が融合し、世界を相手に戦う準備を整えています。
また、5位の富士フイルムホールディングスは、エックス線撮影や超音波診断装置に加え、PACSと呼ばれる「医用画像管理システム」に強みを持っています。PACSとは、病院内で撮影された膨大なデジタル画像を保存し、医師のPCに素早く配信する、いわば病院の画像インフラのことです。同社は内視鏡や再生医療分野にも注力しており、積極的なM&A(合併・買収)を通じて、トータルなヘルスケアカンパニーへの進化を加速させている最中です。
私自身の視点としても、これら日本企業の躍進は、単なる「機械の販売」に留まらない点に価値があると考えます。日本メーカーが得意とする、故障の少なさやきめ細やかなメンテナンス体制、そして現場の医師の要望を製品に反映させる「職人気質」が、信頼という名の高い壁となって欧米勢に対抗しているのでしょう。ハードウェアの品質における「メイド・イン・ジャパン」への信頼は、2019年現在もなお世界のスタンダードであり続けています。
AIの本格導入が引き起こす地殻変動の予兆
しかし、これまでの勢力図を根底から覆す可能性を秘めているのが、人工知能(AI)の台頭です。これまでは解像度の高さや撮影スピードの速さが機器の価値を決めてきましたが、これからは「AIによる診断支援機能」が勝負の分かれ目になるでしょう。撮影された画像から、人間では見落としそうな微細な病変をAIが自動で見つけ出したり、腫瘍が良性か悪性かを瞬時に判定したりする技術が、2019年から本格的に製品へ搭載され始めています。
この変化は、ソフトウェアの重要性が高まることを意味しています。そのため、米グーグルのような巨大IT企業がこの分野での存在感を強めてくることは間違いありません。従来のようなハードウェアの売り切りモデルではなく、AIアルゴリズムの更新やデータ解析サービスといった、継続的なソフトウェア提供がビジネスの核となっていくでしょう。日本メーカーがこの「知能化」の波にどこまで対応できるかが、次世代のシェア争いの鍵を握っています。
私たち編集部としては、日本企業が培ってきた「画像を作る技術」と、最新の「画像を読み解くAI技術」が融合することで、がんなどの早期発見がさらに容易になる未来を確信しています。今後、7位の日立製作所や8位のコニカミノルタを含めた日本勢が、AIを武器にビッグスリーを追い越す日が来るかもしれません。技術の転換点に立つ今、医療の未来を左右する画像診断機器の進化から、一瞬たりとも目が離せない状況が続いています。
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