日本を代表する総合商社である三菱商事が、2019年8月1日に発表した2019年4月1日から2019年6月30日までの第1四半期連結決算は、市場に驚きを与えました。純利益が前年の同じ時期と比べて21%も減少する1612億円にとどまり、この四半期ベースでの減益は実に4年ぶりの出来事となります。これまで快進撃を続けてきた同社にとって、一つの大きな転換点を迎えた印象を受ける数字といえるでしょう。
今回の決算内容は、事前に専門家たちが予測していた1700億円という利益水準に届かなかったため、投資家の間でも波紋を広げました。発表直後の東京株式市場では、同社の株価が一時的に前日比で3%も下落する場面が見られ、市場がいかに今回の結果を重く受け止めたかが伺えます。SNS上でも「商事ですら減益とは、世界経済の冷え込みが本物になってきた」といった、今後の景気動向を不安視する声が目立っています。
利益を押し下げた要因は一つではなく、同社が誇る「資源」と「非資源」の両輪が同時に苦戦を強いられた点に特徴があります。まず非資源分野に目を向けると、特に自動車・モビリティ事業の落ち込みが顕著で、利益は32%減の174億円まで縮小しました。これは、提携関係にある三菱自動車が大幅な減益に陥ったことに加え、収益の柱であったタイやインドネシアでの事業が振るわなかったことが大きな要因となっています。
さらに、私たちの食卓にも関わる食品事業では、2014年に傘下に収めたノルウェーの養殖大手「セルマック」が赤字に転落するという予期せぬ事態に見舞われました。北米市場での価格下落という市場環境の悪化に加え、自然災害である赤潮の被害が養殖場を襲ったのです。こうした不運も重なり、食品事業全体の純利益は前年比でほぼ半減となる63億円まで激減する結果となりました。
豪州の石炭事業が直面するコスト増と不透明な世界情勢
一方で、三菱商事の稼ぎ頭である金属資源部門も、前年比19%減の590億円と苦しい戦いを強いられています。特にオーストラリアにおける製鉄用の原料炭事業において、生産コストが上昇したことが利益を圧迫しました。ここで言う「原料炭」とは、鉄を作る際の燃料や還元剤として欠かせない石炭の一種ですが、掘り出しに関する経費が増大したことが、同社の屋台骨に少なからず影響を及ぼした形です。
また、火力発電などに使われる燃料炭についても、これまで保有していた鉱山の権益を売却したことで、そこから得られる利益が剥落したことも減益に拍車をかけました。増一行CFO(最高財務責任者)は2019年8月1日の会見で、「事業環境は厳しさを増している」と語り、世界的な景気減速に対する強い警戒感を露わにしています。米中貿易摩擦などの地政学リスクが、実体経済に影を落とし始めているのは間違いありません。
編集者の視点から見れば、今回の減益は決して三菱商事一社の失策ではなく、グローバル経済の変調を告げる「カナリアの歌」のようにも感じられます。自動車の販売不振や資源価格の変動は、まさに世界経済の体温計そのものです。しかし、同社は2020年3月期通期の純利益予想を、前期比2%増の6000億円とする強気の姿勢を崩していません。この目標をどう達成するのか、その手腕が問われています。
厳しい船出となった2019年度ですが、三菱商事が持つ多様なビジネスポートフォリオが、今後の荒波をどう乗り越えていくのか注目に値します。資源依存からの脱却を掲げる中で、いかにして新たな収益の柱を構築し、投資家や消費者の信頼を繋ぎ止めるのか。同社の次なる一手が、日本の産業界全体の試金石となることは間違いないでしょう。私たちも、その動向を冷静かつ注視していく必要があります。
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