2019年08月07日現在、世界の投資マネーが急激な勢いで安全な場所へと逃避を始めています。米中両国の対立がかつてないほど先鋭化していることを受け、投資家たちが新興国の株式や高い利回りを誇る債券といった、いわゆる「高リスク資産」を売り払う動きを強めているためです。こうした混乱の渦中で、世界の景気の先行きには暗雲が垂れ込めていると言わざるを得ません。
特にSNS上では、日経平均株価が2019年08月06日に一時600円を超える急落を見せたことに対し、「ついに本格的な調整が来たか」「どこまで下がるのか不安」といった悲鳴に近い声が相次いでいます。市場関係者からも、摩擦の解決の出口が見えないことへの警戒感が示されており、BNPパリバ香港の岡沢恭弥氏は現状を非常に厳しく捉えています。まさに、市場全体が極めて神経質な状態に陥っているといえるでしょう。
新興国を襲う「トリプル安」の恐怖と信用不安の正体
今回のリスク回避の動きで、最も深刻な影響を受けているのが新興国市場です。インドネシアや南アフリカ、ブラジルなどでは、株式・債券・通貨のすべてが売られる「トリプル安」の様相を呈しています。投資家の間では、国や企業の債務不履行(デフォルト)に備えるための保険料ともいえる「クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)」の数値が悪化しており、特に中国の指標は2019年08月05日に約2カ月ぶりの高水準を記録しました。
専門的な用語である「CDS」とは、投資対象が破綻した際に損失を補填してもらう権利を売買する取引のことですが、この価格が上がるということは、それだけ「倒産や破綻の危険が高まっている」と市場が判断している証拠です。インドネシアなどの国々では、対外債務がGDPに対して高い水準にある一方で、いざという時の蓄えである外貨準備高が不足しており、こうした構造的な脆さが投資マネーの流出を加速させる悪循環を招いています。
こうした状況下では、自国の通貨安を防ぐために利上げを行いたいところですが、金利を上げれば国内の景気を冷え込ませるという副作用が伴います。みずほ総合研究所の長谷川克之氏は、通貨安が進むことで機動的な政策が打ちにくくなっていると分析しており、各国の中央銀行は極めて難しい舵取りを迫られています。私自身の見解としても、現在の新興国はまさに「出口のない迷路」に迷い込んでいるような危うさを感じます。
逆イールドの拡大と金価格の高騰が告げる景気後退の予兆
一方で、リスクを嫌ったマネーは「安全資産」へと一気になだれ込んでいます。2019年08月05日には米国10年物国債の利回りが1.7%台まで低下し、市場では「逆イールド」の幅が拡大しました。通常、期間の長い債券の方が利回りは高くなるものですが、これが逆転する現象は、投資家が近い将来に景気が悪化すると確信している時に起こる「景気後退の前兆」として知られています。
驚くべきことに、米国債の3カ月物と10年物の利回り差は、リーマン・ショック前の2007年以来という極めて異例な水準にまで達しました。さらに、実物資産として信頼される「金」にも資金が集中しており、2019年08月06日の国内金小売価格は約40年ぶりの高値を記録しています。これは、通貨や株式という紙の資産に対する不信感が、いかに強まっているかを如実に物語っている現象ではないでしょうか。
過去最長といわれる景気拡大を続けてきた米国経済ですが、足元では明らかに異変の足音が聞こえ始めています。これまでの楽観論は影を潜め、市場の脆弱さが露呈した今の状況は、世界経済が大きな転換点に立たされていることを示唆しています。私たち編集部としても、この不安定な情勢がどこまで続くのか、そして実体経済にどのような影響を及ぼすのかを、引き続き注視していく必要があると考えています。
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