2019年08月06日、空調大手のダイキン工業が発表した2019年04月から06月期の決算は、欧州市場での目覚ましい躍進を印象づける内容となりました。現在、ヨーロッパ各地を未曾有の熱波が襲っており、その影響でエアコンの需要が爆発的に高まっています。同期間の欧州事業における売上高は、前年の同じ時期と比べて7%も増加しました。特にフランスでは2019年06月下旬に、観測史上最高となる摂氏45.9度を記録しており、命に関わる暑さが人々の購買行動を劇的に変えています。
この異例の事態に、SNS上では「ついにヨーロッパでもエアコンが必須になる時代が来たのか」「石造りの建物は一度熱がこもると逃げ場がないから、ダイキンの進出は救世主に見えるはず」といった驚きや期待の声が溢れています。実際に現場では、手頃な価格帯のモデルを中心に受注が昨年の2倍以上に膨れ上がっており、パニックに近い状況と言えるでしょう。2020年03月期の通期売上高は、リーマン・ショック前の過去最高を塗り替える3900億円を見込んでおり、その勢いは止まる所を知りません。
ダイキンの欧州事業を率いる三中政次副社長は、現在の状況を「ドイツやフランスにおけるエアコン普及の夜明け前だ」と力強く表現されています。実は、これまでイタリアやスペインといった南欧地域を除けば、欧州での家庭用エアコン普及率はわずか1桁台に過ぎませんでした。景気後退が懸念されるドイツでさえ、この記録的な暑さを前にしては、高級ホテルですら冷房設備を急ぎ導入する動きを見せています。まさに、これまでの常識が覆される転換点に私たちは立ち会っているのです。
工事待ち1〜2カ月の衝撃!普及を阻む「歴史的建造物」の壁とダイキンの戦略
しかし、需要が急増する一方で、深刻な課題となっているのが「設置工事」のキャパシティ不足です。現在、フランスやドイツではエアコンを購入しても設置までに1カ月から2カ月待ちという事態に陥っています。これは単なる人手不足だけが理由ではありません。日本のようにあらかじめ壁に配管用の穴が開いている家は稀で、歴史的な石造りの建物に穴を開ける作業には膨大な時間と高度な技術を要するからです。冷房文化がなかった地域ならではの、インフラ上の高い壁が立ちはだかっています。
ここで注目すべきは、ダイキンが単に製品を売るだけでなく、現地の販売店に対して冷媒(れいばい)や配管の技術を直接指導している点でしょう。ここで言う「冷媒」とは、エアコン内で熱を運ぶ役割を果たすガスのことで、適切な取り扱いには専門知識が欠かせません。地道な教育を通じて施工能力を底上げする同社の姿勢は、一過性のブームで終わらせないという強い覚悟を感じさせます。ノルウェーなどの北欧諸国にも拠点を新設し、欧州全土を網羅する体制を着々と整えています。
編集者の視点から見れば、今回のダイキンの躍進は、気候変動という地球規模の課題に対して、日本の卓越した省エネ技術が解決策を提示している構図に見えます。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、30年後の欧州の需要は現在の2.5倍に達するとされています。環境規制が厳しい欧州において、燃焼系の暖房から電気によるヒートポンプへの移行が進む中、ダイキンが「涼しさ」と「環境性能」を両立させて市場を席巻する日は、そう遠くない将来に実現するに違いありません。
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