日本のスマートフォン市場が、かつてない激動の渦に飲み込まれています。米国の輸出規制の影響を受け、国内の携帯キャリア各社がこぞって発売を延期していた中国・華為技術(ファーウェイ)製の最新機種ですが、ここに来て販売再開の動きが急加速しているのです。2019年08月05日にはKDDIと楽天が先陣を切って発売を発表し、翌2019年08月06日にはソフトバンクも傘下のワイモバイルで2019年08月08日から取り扱うことを明らかにしました。
各社が満を持して投入するのは、世界屈指のカメラ性能を誇る「P30」シリーズです。ソフトバンクの広報担当者は、ファーウェイ側への確認作業を経て、顧客への提供に問題がないと総合的に判断したことを説明しています。しかし、この決定に対してSNS上では「高性能なスマホが戻ってくるのは嬉しい」という期待の声がある一方で、「米中の対立が続く中で本当に使い続けられるのか」といった将来的なサポート体制への不安の声も根強く、ユーザーの反応は真っ二つに割れている状況です。
「同業者としておかしい」NTTドコモが見せる慎重姿勢の理由
競合他社が次々と攻めの姿勢に転じるなか、業界最大手のNTTドコモだけは静観を貫いています。2019年08月06日午後の時点でも、最新機種「P30 Pro」の予約受付は停止されたままです。同日の決算会見に臨んだNTTの澤田純社長は、他社の販売再開という決断に対し、「現在の不透明な状況下で販売を強行するのは、結果としてお客様に迷惑をかけてしまう。同業者から見ても理解しがたい、おかしな取り組みだ」と、強い言葉で疑問を投げかけました。
澤田社長がここまで懸念を示す背景には、米商務省による「エンティティー・リスト(EL)」の問題があります。これは安全保障上の懸念がある企業に対し、米製品の輸出を事実上禁止する「禁輸リスト」を指す専門用語です。現在は保守作業などに限って特別措置が取られていますが、その猶予期限は2019年08月19日に迫っています。NTT側は、この期限を過ぎた後に規制が緩和される可能性は極めて低いと見ており、販売後のアフターケアが困難になるリスクを重く受け止めているのです。
10月の法改正を控えた「高コスパ」端末への期待とジレンマ
リスクを承知の上で各社がファーウェイ製品を扱いたいと願う背景には、その圧倒的なコストパフォーマンスがあります。最新の「P30 Pro」は背面に4000万画素の超感度カメラを含む複数のレンズを搭載し、プロ顔負けの写真撮影が可能です。特にエントリーモデルの「P30 lite」は、3万円台半ばという驚愕の低価格を実現しています。キャリア幹部からは「本音を言えば、この高性能と安さを武器に一刻も早く販売戦線に投入したい」という切実な声も漏れ聞こえてきます。
さらに、2019年10月01日からは改正電気通信事業法が施行されることも大きな要因でしょう。この法律は、通信料金と端末代金をセットで割り引く手法を禁じ、端末の値引き自体も最大2万円までに制限するものです。これまでのような大幅な値引きが期待できなくなり、スマホ価格の高騰が予想されるなか、もともとの本体価格が安く、かつ高性能なファーウェイ製品は、市場にとって喉から手が出るほど欲しい存在なのです。
個人的な見解を述べさせていただくと、今回の各キャリアの判断の差は、企業の「信頼性」と「商機」のどちらを優先するかという哲学の違いが鮮明に表れた結果だと言えます。ユーザーの利便性を考えれば選択肢が多いに越したことはありませんが、購入後のアップデートや修理に支障が出る可能性を考慮すると、NTTドコモの慎重な姿勢も一理あるでしょう。10月の法改正を目前に控え、この「ファーウェイ・ショック」が秋の商戦にどのような審判を下すのか、目が離せません。
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