株式市場において、企業が株主に対してどれだけ利益を還元するかという「株主還元政策」への関心がかつてないほど高まっています。大和証券の鈴木政博氏が実施した調査によれば、TOPIX500を構成する主要企業のうち、具体的な数値目標を掲げる企業は2019年時点で275社に達しました。これは前年比で18社増加しており、調査を開始した2007年の166社と比較すると、約7割も急増している計算になります。多くの企業が投資家を意識した経営へと舵を切っている証拠と言えるでしょう。
還元策の開示が進む一方で、投資家が最も気になるのは「どのような還元方針を掲げる企業の株価が堅調なのか」という点ではないでしょうか。2019年6月末までの1年間における株価騰落率を分析したところ、興味深い結果が浮かび上がりました。同期間中にTOPIX500指数が10%も下落するという厳しい相場環境の中、配当性向を基準とする企業は12%の下落を記録しています。しかしその一方で、DOEを指標に掲げる銘柄群の下落率はわずか7%にとどまり、市場全体を上回る底堅さを見せました。
減配リスクを抑える魔法の指標「DOE」の仕組みとメリット
ここで注目される「DOE」とは、日本語で「自己資本配当率」と訳される指標のことです。これは企業が蓄積してきた純資産(自己資本)に対して、どの程度の配当を支払うかを示す数値を指します。一般的に広く用いられる「配当性向」が、その年度に稼いだ純利益を基準にするのに対し、DOEは企業の体力を表す自己資本を基準にします。そのため、たとえ一時的に業績が悪化して利益が減ったとしても、配当額が急激に下がりにくいという大きな特徴を持っています。
SNS上でもこの結果に対して、「不透明な相場だからこそ、安定して配当を受け取れるDOE採用銘柄は安心感がある」といった声や、「配当性向だけでなくDOEも併記する企業に投資したい」という前向きな反応が目立っています。鈴木氏も指摘するように、DOEを採用している企業は「将来的に減配を想定していない優良企業」であるとの信頼を得やすい傾向にあります。投資家にとっては、景気の波に左右されずに安定したインカムゲインを期待できる点が、大きな魅力として映っているのでしょう。
現在、DOEを公表している企業は資生堂や塩野義製薬、キユーピーなど、日本を代表する22社に限られています。配当性向を掲げる203社や、自社株買いを含めた総還元性向を重視する58社と比較すると、その数はまだ少数派かもしれません。しかし、コーポレートガバナンス(企業統治)改革の波が押し寄せる中、株主との対話を重視する姿勢はより厳しく問われています。今後は単に還元額を増やすだけでなく、DOEのような「持続可能性」を感じさせる指標の採用がさらに広がるはずです。
私自身の見解としても、現在の不安定な世界情勢を鑑みれば、利益の多寡で配当が乱高下する銘柄よりも、資本に基づいた規律ある還元を行う銘柄が選好されるのは必然の流れだと感じます。企業側にとっても、DOEの採用は長期保有を目的とした安定株主を呼び込む強力な武器になるでしょう。2019年08月08日現在のトレンドとして、この還元目標の「示し方」の違いが、投資パフォーマンスに決定的な差を生み出す重要なチェックポイントになりつつあるのは間違いありません。
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