今、東京にある中国地方のアンテナショップが熱い注目を浴びています。中でも広島県のアンテナショップ「TAU(タウ)」は、2018年度の売上高が過去最高を記録し、なんと北海道に次いで全国で2位という快挙を達成しました。この驚異的な伸びは、前年度比で9%増となる10億5600万円を達成し、2012年の開業以来、初めて二桁の成長を見せました。これは、単なる物販の場という枠を超え、広島の魅力を東京で発信する拠点として、都民の心を見事に掴んでいる証拠でしょう。
「TAU」人気の立役者の一つが、プロ野球・広島東洋カープの関連グッズです。この年のセ・リーグ4連覇への期待が高まっていたこともあり、グッズコーナーは連日賑わいを見せていました。5月下旬に銀座の店舗を訪れた都内在住の女性客は、「都内ではここが一番品揃えが良い」と語り、ユニホームを探していました。彼女のように広島にゆかりがなくとも、その好成績に魅せられて応援する「カープ女子」が増加しているのです。球団の好調さが、物販という形でアンテナショップの売上を力強く後押ししている様子が窺えます。
特筆すべきは、カープ戦が東京で開催される日には、多くのファンが「TAU」で応援グッズを買い求め、「完全武装」して東京ドームや神宮球場へと向かうというエピソードです。応援の熱量がそのまま購買力に結びついているのは、球団とショップが一体となって作り出す「熱狂」の賜物だと言えるでしょう。また、日本酒や伝統工芸品の「熊野筆(くまのふで)」といった広島の特産品も、変わらず根強い人気を誇っています。
カープグッズの盤石な売上に加えて、2017年春の改装で新たに開設された鮮魚コーナーも売上増加の大きな要因です。新鮮な広島県産の魚介類が好調な売れ行きを見せており、瀬戸内海の豊かな海の幸が東京の消費者に受け入れられています。アンテナショップが提供する「本場の味」は、遠出が難しい都民にとって、その土地の文化や食を体験できる貴重な機会となっています。
さらに「TAU」では、広島県産品の普及と販路拡大を目的とした「テストマーケティング」に積極的に取り組んでいます。これは、特定の期間、商品を限定販売し、顧客の反応や市場性を探るマーケティング手法のことです。店舗や県のブランド推進課が協力し、製造元と綿密に相談を重ね、時にはターゲット層に響くようパッケージデザインまで刷新します。
このテストマーケティングが大成功を収めた事例が、まるか食品(広島県尾道市)の「イカ天瀬戸内れもん味」です。若い女性を意識したパッケージデザインが功を奏し、期間限定での販売から常設の土産コーナーの定番へと昇格しました。斬新なパッケージと、イカ天の香ばしさに瀬戸内レモンの爽やかな酸味が加わったテイストが、新しいファン層を開拓したのです。これは、アンテナショップが単なる販売拠点ではなく、新しい特産品を生み出し、市場に送り出す「インキュベーション(事業創出)」の役割を果たしていることを示しています。
「TAU」の村上祥平店長は、「瀬戸内側だけでなく、県北の特産品の発掘も進める」と意欲を語っておられます。広島県は、瀬戸内海沿岸だけでなく、中国山地が広がる県北部にも豊かな自然と優れた特産品が眠っています。今後、知られざる北部の特産品が発掘され、東京で人気を博していくことを考えると、大変楽しみです。アンテナショップの取り組みは、地方創生と首都圏での新たな需要創出という、二つの大きな役割を担っていると言えるでしょう。
広島県だけではありません。中国地方のアンテナショップは、物販以外の面でも進化を見せています。例えば、リニューアルした「とっとり・おかやま新橋館」では、新たに地方への「移住相談窓口」を設置しました。これは、単に商品を購入してもらうだけでなく、その地域への興味をより具体的な行動へと繋げる取り組みであり、アンテナショップが持つ「交流拠点」としての機能がより一層強化されていることを意味します。地域の魅力を多角的に発信する彼らの努力と工夫は、今後も都民の心を掴み続けるでしょう。
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