中部地銀が挑む「筋肉質経営」の裏側とは?2019年4〜6月期決算で見えた超低金利時代の生き残り戦略

中部3県を拠点とする地方銀行の2019年4月から6月期における決算が、2019年08月09日までに出そろいました。この期間の業績を紐解くと、本業でどれだけ効率的に利益を上げたかを示す「実質業務純益」において、調査対象となった7行・グループのうち6つが増益を達成するという興味深い結果となっています。長引く低金利政策という逆風のなかで、各行が意地を見せた形と言えるでしょう。

しかし、この増益の舞台裏を覗いてみると、手放しでは喜べない厳しい現実が浮き彫りになります。今回の利益確保を支えた最大の要因は、決して貸出業務などの「稼ぐ力」が復活したからではありません。むしろ、人件費をはじめとする徹底したコストカット、いわば「身を削る努力」によって捻出されたものなのです。SNS上でも「地銀のリストラが本格化している」「いよいよ正念場だ」といった不安と期待が入り混じる声が散見されます。

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「削る経営」の最前線と十六銀行が示す危機感の正体

特に注目すべきは、今回すべての銀行が人件費の削減に踏み切ったという事実です。なかでも十六銀行は、グループ会社への出向を戦略的に増やすことで、人件費を前年同期比で7%も抑えることに成功しました。また、業務の効率化によって残業代を大幅にカットしており、2020年03月期の通期では2年前の半分にあたる6億円から7億円規模まで縮小する見通しとなっています。これは現場の働き方が劇的に変化している証拠です。

石黒明秀取締役が「働き方の抜本的な見直しが必要だ」と語る背景には、単なる経費節減以上の危機感が潜んでいます。ここでいう「実質業務純益」とは、一般企業の営業利益に近い指標ですが、銀行が預金と貸出の利息差(利ざや)などで稼いだ利益から、人件費や物件費を差し引いたものです。つまり、稼ぎが減る一方で利益を維持するためには、固定費を削り続けるしかないという「守りの経営」の限界が見え隠れしているのです。

縮む利ざやと米中対立の影!中部経済を襲う新たな不透明感

融資の状況を見てみると、2019年06月末時点での貸出金残高は5年前と比較して約2割も伸びています。しかし、皮肉なことに純利益は1割以上も減少してしまいました。日本銀行によるマイナス金利政策の影響で、貸し出せば貸し出すほど利益が薄くなる「薄利多売」の状態に陥っているからです。かつては収益の柱だった住宅ローンも、激しい金利競争によってもはやかつての輝きを失っているのが現状でしょう。

さらに追い打ちをかけるのが、不安定な世界情勢です。激化する米中貿易摩擦の煽りを受け、中部地方の強みである輸出産業にも減速の兆しが見え始めています。企業が設備投資に消極的になれば、新たな資金ニーズはますます細ってしまうでしょう。日経平均株価が2万円の大台を割り込みそうな勢いで下落し、10年物国債の利回りもマイナス0.225%という低水準を記録するなか、銀行は「資金をどこに投じればいいのか」という出口の見えない迷路に迷い込んでいます。

私個人の見解としては、もはやこれまでの「金利で稼ぐ」というビジネスモデルは終焉を迎えたと感じざるを得ません。コスト削減は一時的な特効薬にはなりますが、持続的な成長にはつながりません。中部地銀には、地域企業のコンサルティングや新しい金融サービスの創出など、本当の意味での「付加価値」が問われています。単にお金を貸すだけの存在から、地域のパートナーへ。今こそ、その覚悟が試されているのではないでしょうか。

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