2019年6月12日に福岡市で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、巨大IT(情報技術)企業、特に米国のGAFAと呼ばれる企業群が、巨額の利益を上げながらも租税回避の手法を駆使してわずかな税金しか納めていない問題への対処が主要テーマとなりました。会議では、経済のデジタル化に対応した国際課税のあり方を見直すことで各国が一致し、新しいルールの最終合意を2020年中に目指す方針を確認したのです。これは、デジタル時代における公平な課税を実現するための、歴史的な一歩と言えるでしょう。
このデジタル課税に関する議論は、G20と経済協力開発機構(OECD)が連携して精力的に進めています。会議に先立ってOECDが取りまとめた作業計画では、これまでの物理的な拠点、すなわち支店や工場がある国でのみ課税できるという旧来のルールを見直し、デジタル取引のサービス利用実態に応じて課税できるようにする方向性が示されました。この新しい課税の考え方は、国境を越えたデジタルサービスが主流となった現代の経済環境に、税制を適応させようとするものです。
新しい具体的な課税策としては、OECDから3つの案が提示されています。一つ目は、SNS(交流サイト)などのサービス利用数を基準とする英国案です。二つ目は、企業のブランド力といった無形資産を基準とする米国案で、多国籍企業全般を視野に入れているのが特徴でしょう。そして三つ目は、利用者のいる国の売り上げなどを根拠に簡易に課税するインド案で、新興国の立場を反映していることがうかがえます。しかしながら、この3案の中で、どの手法を採用するかについては、まだ結論が出ていない状況です。
特に、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)を念頭に置く英国と、課税対象をIT企業だけでなく多国籍企業全般に広げるべきだと主張する米国との間で、利害の調整が難航しており、国際的な合意の見通しは立っていません。この調整の遅れは、今後の世界経済にとって大きなリスクとなり得ると考えられます。なぜなら、日本企業への影響も小さくないからです。課税対象が多国籍企業に拡大すると、「IoT」(Internet of Things、あらゆるモノがインターネットにつながる仕組み)サービスで国際展開する日本の自動車や製造業などが、利用者のいる国で課税される可能性が生じるため、動向を注視する必要があるでしょう。
また、OECDの作業計画には、企業を誘致するために各国が競って法人税率を引き下げる**「税金引き下げ競争」を防ぐため、法人税率に事実上の「最低税率」制限を導入する案も盛り込まれています。これは、国際的な課税の公平性を担保し、各国の財政基盤を守る上で極めて重要な提案だと評価できます。国際協調によって、デジタル経済に対応した課税の公平性が確保されれば、世界経済の持続的な成長にもつながるはずです。
デジタル課税の国際合意がもたらす未来と日本の役割
G20とOECDは、2020年1月までに新しい制度の大枠について合意し、同年年末までに最終報告書をまとめることを目標としています。しかし、各国間の利害調整は容易ではなく、予断を許さない状況が続くと見ています。国際協調の努力が進められる一方で、英国やフランスなどの欧州諸国を中心に、大手IT企業に対して売上高などを基準に独自に課税する動きも出てきているのが現状です。
これらの独自課税は、国際的な枠組みが確立されるまでの暫定措置と位置づけられていますが、もし国際合意が遅れてしまうと、各国での独自課税が乱立することになるでしょう。そうなると、二重課税が生じるなど、税制のゆがみがもたらされる恐れがあり、世界経済の混乱を招きかねません。国際的な枠組みの早期合意こそが、この問題を解決する鍵となるでしょう。
2019年のG20議長国であった日本は、このデジタル課税問題の重要性を一貫して指摘し、各国に対して積極的な取り組みを促してきました。議長国の役割が終わった後も、国際的なルールづくりに積極的な関与を続けるべきだと強く主張いたします。日本のリーダーシップが、国際的な合意形成を後押しし、デジタル時代にふさわしい公平な税制を実現する力になるものと確信しているからです。
SNS上でも、「GAFAへの課税は当然」「なぜ今まで放置されていたのか」といった意見が多く見られ、巨大IT企業が社会のインフラとしての役割を担っている以上、それに見合った税負担を求めるべきだという世論の強い後押しがあると感じられます。この国際的な税制改革の動きは、単なる税収確保の問題に留まらず、デジタル経済の持続可能性と公平性**を確保するための、極めて重要な取り組みであると言えるでしょう。
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