2019年6月11日、タイでは歴史的な瞬間を迎えました。新首相に選出されていたプラユット暫定首相が、ワチラロンコン国王の正式な承認を経て、ついに首相の座に就いたのです。軍出身であるプラユット氏は、事実上の「続投」という形で、国のかじ取り役を担うことになりました。この正式就任は、約5年ぶりに民政復帰を目指すタイにとって、非常に大きな節目といえるでしょう。
就任直後の演説では、「首相として国に仕える機会を与えてくれた国会議員と政党に感謝する」と述べ、支持基盤への謝意を表明されました。そして、最も注目すべき公約として、「国民の声を聞き、汚職撲滅や格差是正に取り組む」と力強く語られたのです。汚職(おしょく)とは、公職にある者が、その地位や権限を利用して私的な利益を図る不正行為のことであり、タイの社会的な課題として長らく指摘されてきました。また、所得や機会の不均衡である格差是正は、安定した社会を築くうえで避けて通れないテーマでしょう。
プラユット新首相は、2019年3月に実施された総選挙を経て、今回の正式就任に至りました。この首相指名選挙では、上院(定数250)と下院(定数500)から合計500票を獲得し、その強固な支持基盤を改めて示しました。特に、軍政が任命した上院議員全員と、下院の親軍勢力である「国民国家の力党」からの支持が決定打となりました。これを受け、プラユット氏は、同党を中心とした19党からなる大規模な連立政権の組閣作業に早速着手されています。連立とは、複数の政党が共同して政権を担当することを指し、多様な民意を反映する一方、政策決定の難しさも伴うのです。
しかし、新政権の発足は順風満帆とはいえない状況です。総選挙で国民国家の力党が獲得した下院議席は116にとどまったため、過半数を確保するためには、中堅政党である「民主党」や「タイの誇り党」といった協力が不可欠でした。報道によると、民主党に農相や商務相、タイの誇り党に運輸相といった主要な閣僚ポストを譲り渡すことを条件に、連立合意がなされたとされています。これは、政権運営におけるパワーバランスを物語るものでしょう。
組閣作業のなかでは、早くも内部での意見対立が浮上しています。国民国家の力党内からは、軍政時代に推進してきた経済政策を継続するためにも、経済関係閣僚ポストは自党で確実に押さえるべきだ、という強い意見が出ていると報じられました。政治の安定と経済の成長は車の両輪であり、特に経済政策を担う閣僚の選定は、新政権の成否を分ける重要事項です。これに対し、プラユット首相は「国民の利益を考えて、適切な着地点を探る必要がある」と述べるに留め、調整の難しさをにじませていらっしゃいます。
この首相正式就任と新政権発足の動きに対して、SNS上では早くも大きな反響が巻き起こっています。多くの国民が新政権への期待を寄せる一方で、連立政権の不安定さや、軍出身の首相による民政運営への懸念を示す声も散見されました。「これでタイは前に進めるのだろうか」「公約の汚職撲滅と格差是正をぜひ実現してほしい」といった様々な意見が飛び交い、国民の高い関心度が伺えます。私自身、軍政から民政への移行は、タイの民主主義にとって重要な一歩だと強く感じています。しかし、複雑な連立与党の思惑や、経済の継続性という難題に、プラユット新首相がどのようにリーダーシップを発揮されるのか、今後の組閣と政策決定の行方に注視していく必要がありそうです。月内にも発足する見通しの新内閣が、国民の期待に応えられる強力な布陣となるのか、注目していきましょう。
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