2019年08月14日現在、私たちの社会は大きな転換点を迎えています。グローバル化の波と少子高齢化という深刻な課題に直面する中で、日本の経済が再び輝きを取り戻す鍵は、間違いなくデジタル技術の活用にあると言えるでしょう。社会全体の生産性を底上げし、新たな付加価値を生み出すためには、これまでの古い慣習を脱ぎ捨てることが求められています。
世界に目を向ければ、デジタル化が経済成長を牽引する力強いエンジンとなっている事実は明らかです。経済協力開発機構(OECD)が2019年2月に発表した報告書でも、デジタル技術の導入によって生産性が向上し始めた企業の存在が指摘されました。かつてはデジタル化の効果を疑問視する声もありましたが、現在は「適切な投資を行えば必ず成果が出る」という確信が世界的な潮流となっています。
しかし、こうした世界の動きに反して、日本のIT投資は停滞の一途をたどっています。2017年の国内IT投資額は16兆3000億円にとどまっており、これは過去のピークである1997年と比較して約2割も減少している計算です。米国が同期間で投資額を2倍以上に増やし、欧州諸国も着実に積み増している状況を鑑みると、日本企業の「守りの姿勢」が浮き彫りになっているのではないでしょうか。
「2025年の崖」を回避するレガシーシステムからの脱却
さらに深刻なのは、限られた予算の使い道です。専門家によれば、日本企業のIT投資の約8割が、既存の古いシステムの維持や運用に消えているといいます。こうした、過去の技術で構築され、複雑化・老朽化してしまった「レガシーシステム」を使い続けることは、将来的に大きなリスクとなります。このままでは2025年以降、経済損失がさらに膨らむという、いわゆる「2025年の崖」への懸念が強まっています。
SNS上でもこの現状に対する厳しい意見が目立ちます。「日本のIT部門はトラブル対応ばかりで、攻めの投資ができていない」「経営層がITを単なるコストと捉えているのが最大の問題だ」といった声が散見されます。こうしたインターネット上の反応は、現場のエンジニアや感度の高いビジネスパーソンが抱く、切実な危機感の表れと言えるかもしれません。
一方で、デジタル技術を武器に急成長を遂げる企業も現れています。インドのホテルチェーン「OYO(オヨ)」は、人工知能(AI)を駆使して客室の価格設定や内装デザインを決定する仕組みを導入しました。AIとは、コンピュータに人間のような知的な判断を行わせる技術のことです。彼らは設立からわずか6年ほどで世界第2位の規模にまで上り詰め、テクノロジーの威力を証明しました。
日本企業がこの負の循環から抜け出すには、経営トップの意識改革が不可欠です。ITを単なる裏方のツールではなく、財務や経営企画と並ぶ戦略の柱として位置付ける必要があります。その象徴として、最高情報責任者(CIO)を置く動きも出始めました。CIOとは、経営戦略に基づいて情報システム全体を統括する役員を指しますが、日本での普及はまだ道半ばです。
クラウド活用と「小さく始める」勇気が未来を変える
先進的な事例も生まれています。三菱UFJフィナンシャル・グループは、2019年4月に数学を専門とする亀沢宏規氏をデジタル化担当の副社長に起用しました。また、石川県の北国銀行は、2021年を目標に主要な銀行システムを「クラウド」へ移行することを決めています。クラウドとは、自社でサーバーを持たず、インターネット越しにサービスを利用する仕組みのことです。
こうした取り組みによって、これまでシステムの維持に追われていたIT人材を、より創造的で競争力を生む分野へとシフトさせることが可能になります。たとえ中小企業であっても、クラウドを賢く使えば、専任の担当者を置かずに業務を効率化し、新規事業にリソースを割くことができるでしょう。1917年創業の老舗、ドイデンキ(東京都渋谷区)がその好例です。
私は、日本企業に最も足りないのは「試行錯誤を許容する文化」だと考えています。デジタル化に完璧な正解はありません。タクシー大手の日本交通が手がけた配車アプリ「JapanTaxi」のように、まずは小規模にスタートし、ユーザーの声を聞きながら改善を繰り返す姿勢こそが重要です。自社で技術者を抱え、柔軟な発想でサービスを育てることが、これからの競争力の源泉となるはずです。
そのためには、終身雇用に縛られない柔軟な人事制度や、技術者が活躍しやすい労働市場の整備も欠かせません。政府と民間が一体となって、挑戦を後押しする環境を作ることが、デジタル社会の実現には必要です。2019年08月14日の今、私たちが踏み出す一歩が、数年後の日本の姿を大きく変えることになるでしょう。未来は、変化を恐れず、テクノロジーを味方につけた者の手にあります。
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