2019年6月12日に開催された世界デジタルサミットにおいて、米SASインスティチュートのオリバー・シャーベンバーガーCOO兼CTOが、人工知能(AI)をはじめとするテクノロジーの進化がもたらす未来の展望について熱く語られました。彼の掲げる使命は、「データを分析する専門家」と「現場でデータを利用する人々」との間に存在する隔たりを解消することです。デジタル化が世界中に広がり、人やモノがボーダレスにつながる現代において、デジタル変革はデータと人間の関係性を根本から変えつつある、と同氏は強調されています。
特に重要な変化として、データへの「アクセス」が「所有」よりも価値を持つ時代になった点を指摘されています。そして、AIの活用によってデータ処理が自動化されることで、計り知れない大きな価値が次々と生まれているのです。SASインスティチュートは、データに潜む特定の傾向や関連性(パターンや相関関係)などを深く掘り起こす「アナリティクス」(データ分析)に強みを持つ企業として知られています。同氏は、このアナリティクスを単なる技術論に終わらせるのではなく、データを深く分析し、その信頼性を高めることで、実社会で「生きるもの」にしなくてはならないと強く主張されています。
実際に、SASは大学と共同で、このアナリティクス技術を大腸がん患者の治療に役立てる試みを実施されました。その結果、コンピューターによる三次元での詳細な解析が可能になり、病変の識別精度が向上しただけでなく、医師の診断にかかる時間まで大幅に短縮されることに成功しています。AIは、このように人間の情報処理能力や専門的なスキルを拡大・補完(拡張)する力を秘めているのです。適切かつ質の高いデータが活用されれば、それは組織全体に必ずやポジティブな影響をもたらすことができるでしょう。
しかしながら、このデータ分析の分野には深刻な課題も存在します。それが、専門的な知識を持つ人材の不足です。多くの企業や組織が、データ分析への投資に対する明確な利益(見返り)が見えないという理由で、導入に踏み切るのを躊躇しているのが現状です。さらに、データサイエンティストと呼ばれる専門家が使う技術的な言葉と、ビジネスの現場の話が噛み合わないというケースも頻繁に見受けられます。この「言語の壁」もまた、データ活用の大きな障壁となっているのです。
私見として、この問題は「専門家の独占」から「普遍的な利用」へとシフトすることで解決に向かうべきだと考えます。シャーベンバーガー氏も、「一定の人間の介入は重要」としつつも、AIを活用してスキルを自動化し、専門知識がない人でも誰もがデータ分析の結果を利用できるようにすることが、これからの時代には極めて重要であると訴えられています。これは、データ活用の民主化を意味するものです。AIが担うべきは、高度な分析の自動化であり、人間が担うべきは、その分析結果から生まれる洞察(インサイト)に基づいた、創造的な意思決定やアクションではないでしょうか。
このニュースはSNSでも大きな反響を呼び、「#データサイエンティスト」「#AI活用」「#デジタルトランスフォーメーション」といったキーワードと共に広く議論が交わされました。特に「AIがデータ処理を自動化し、誰もが利用できる時代へ」という考え方に対しては、「専門家でなくても分析できるなら、うちの部署でも進められそう」「人材不足の解消に期待できる」といった前向きな意見が多数寄せられています。SASのCOO兼CTOが提唱する「分析の壁」を取り払うという考え方は、現代のデジタル戦略を考える上で、非常に示唆に富んだものだと言えるでしょう。
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