✈️ANAが進めるデジタルトランスフォーメーションの最前線!ペットの空旅もIoTでスムーズに

全日本空輸(ANA)グループは今、現場の各部門で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を推進し、大きな変革に取り組んでいらっしゃいます。DXとは、デジタル技術を活用して業務やビジネスモデルそのものを変革し、新たな価値を生み出す取り組みのことです。その一環として、空港のチェックインカウンターでは、お客様の大切なペットをお預かりするケージを、インターネットに接続して管理する「IoT」技術を活用した実証実験が進められているのです。

夏の繁忙期など、多くのお客様がペットとの空旅を楽しまれる時期には、このケージの在庫不足や、特定の空港への偏りが課題となっていました。以前は、カウンターの担当者が各空港に電話で在庫を問い合わせ、ケージを回送してもらう手間が発生していたようです。この非効率な状況を解消するため、ケージ一つひとつに「ビーコン」と呼ばれる小型の発信機を取り付け、個体管理を可能にすることで、管理業務の効率化を目指しています。

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IoTと法令問題を乗り越えた技術的な工夫

この仕組みは、すでに空港内で貸し出されている車椅子やベビーカーの管理に利用されている、近距離無線通信規格「Bluetooth(ブルートゥース)」を使った個体管理の応用編です。しかし、ペットケージを航空機の貨物室で輸送する際には、通常のビーコンがBluetoothの電波を常時発信し続けるという点が、法令上の問題に抵触してしまいます。そこで、ANAグループが着目したのは、大日本印刷が開発した画期的な技術です。

それは、特定パターンの磁界を受信したときだけ電波を発信するビーコンと、それを可能にする磁界発生装置を組み合わせたシステムです。この磁界発生装置をチェックインカウンターやケージ置き場に設置することで、空港スタッフが持つiPhoneの専用アプリから、ケージの位置情報をまとめて確認できるようになりました。これにより、ビーコン付きケージは空輸中にBluetooth電波を発信することなく、安全な輸送と効率的な管理を両立できる見通しです。

この実証実験は、2019年2月から羽田-新千歳線などで開始されており、IT部門に当たるデジタル変革室イノベーション推進部の松尾賢治氏は、「実際にペットを格納した状態で通信環境に問題がないか、細かく検証している段階です」と、導入に向けた確かな歩みを語っておられます。この取り組みは、私たち編集者から見ても、現場の課題解決に真摯に向き合い、法令や制約をクリアする技術を見つけ出すという、DX推進のあるべき姿を示していると言えるでしょう。

「POC倒れ」を防ぐANA流のDX推進術

多くの企業がDXに取り組む中で、新しい技術の「概念実証(Proof of Concept、PoC)」は行ったものの、本格導入に至らず頓挫してしまう、いわゆる「PoC倒れ」が多発しています。PoC倒れに陥る企業は、新しいデジタル技術や製品ありきで、それをそのまま現場に持ち込み、実証実験をしてしまいがちです。しかし、この方法では、技術が現場のオペレーションに適合するケースは稀で、「すごい技術だが、うちのやり方には合わない」という結果に終わってしまうことが少なくありません。

これに対し、ANAグループはPoC倒れを回避するため、DXとオペレーション改革を一つのセットとして推進するという、極めて堅実な手法を採用しています。まず、業務改革の担当者がストップウォッチなどを手に現場のオペレーションを長時間観察し、業務の流れや作業時間などを図やフローチャートで見える化します。そして、現場の社員と議論を重ねてあるべき業務の姿を描き出すのです。

この「見える化された現状」と「あるべき姿」とのギャップを明確にした上で、そのギャップを埋めるために何をどう変えるべきかを深く考えます。その変革の手段としてITの活用が有効そうだという仮説が初めて出てきてから、技術や製品の選定に取り掛かるのです。つまり、IT導入は必須の前提ではないという点が非常に重要なポイントでしょう。

実証実験後も、やりっ放しにせず、結果を踏まえて「ITの存在を前提とした場合に、オペレーションをどう変革できるか」を再度検証します。このオペレーションの見直しと再検証を繰り返すことで、PoC倒れを防ぐだけでなく、既存業務に潜む無駄を取り払い、効率を大幅に高めることができるのです。この「業務改革を起点としたIT導入」こそが、ANA流のDXと言えるでしょう。

人口減少時代を見据えたDXへの強い危機感

ANAホールディングス(HD)は、2018年度から2022年度の中期経営計画の中で、こうしたオペレーション改革とDXを明確な重点課題として掲げています。既に複数の取り組みが本格導入に至っており、ITを活用した抜本的なオペレーション改革も着実に実現されています。SNS上でも、利用者からは「手続きがスムーズになった」「待ち時間が減った」といった具体的なポジティブな反響が寄せられており、DXによる効果が目に見える形で現れ始めているようです。

ANA HDがこれほどまでにDXを矢継ぎ早に進める背景には、オペレーションを担う現場スタッフの不足に対する強い危機感があります。ANA空港センター業務推進部企画チームリーダーの山口忠克氏は、「日本の人口が減っていく現状を踏まえ、オペレーションを担える社員が減っても、これまで通り航空便の発着を安全に維持できるように、仕事のやり方を刷新していく必要があります」と、その動機を説明されています。現時点では人手不足が運航に影響を及ぼす状況にはなっていないものの、将来的な危機を見据え、デジタル技術の力で安全と効率を両立させようという、強い意志と先見性がうかがえます。

私たちの意見としては、このANAグループの取り組みは、単なる最新技術の導入ではなく、日本の産業界全体が直面する人手不足という構造的な課題に対する、極めて具体的で現実的な解決策を示していると考えられます。現場の声を吸い上げ、業務プロセスを徹底的に分析し、地に足の着いたDXを進める姿勢は、他業種の企業にとっても大いに参考になるモデルケースでしょう。

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